就活生に人気の広告代理店業界。仕事内容やキャリアを徹底分析
就活生から高い人気を誇る、電通・博報堂といった、大手広告代理店。 「就活人気ランキング」でも、上位に名を連ねています。
しかし、なんとなくのイメージは持ちながらも、具体的にはどんな仕事をしているのかがわからない、という就活生も多いかも。
また「広告代理店は激務」「営業がキツくて、体育会系出身や、コミュニケーション能力が高い人でないと活躍できない」といったイメージがある業界ですが、そのイメージは果たして本当なのでしょうか?
そこで今回は「広告代理店、徹底分析」と称し、広告代理店の現役社員、10年の勤務経験のある梅原さん(仮名)にインタビューを実施。
その経験から、広告代理店のビジネスモデル、仕事内容、そして就活生が気になる業界の裏側まで、徹底的にお話を伺いました!
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まずは広告代理店の仕事内容を簡単に理解しよう
―本日はよろしくお願いいたします。
就活生に人気の広告代理店業界。具体的な仕事内容をお伺いしていければと思うのですが、まずは簡単に広告代理店のビジネスモデルについてお伺いしても良いですか?
梅原:広告代理店とは、その名の通り「クライアント企業の広告活動」つまりマーケティングを「代理的に行う」ことで、収益を得ています。
例えば、新しい商品を発売したので、TVでCMを出したいという企業があったとしましょう。
ただ、広告を作って配信をするのは、簡単なことではありません。
どんなコンセプトで、どんなCMを作れば、消費者の心に残る広告ができるのか。
こんなCMが作りたい、と思っても、それを実現するのも大変ですよね。 撮影ロケーションを設定したり、人気芸能人のキャスティングを行ったり。撮影の現場には専用の機材や、専門的なスキルを持つ人材が必要ですし、撮影したものを編集・加工する専門家も必要です。
そして、実際にCMが出来上がっても、それを実際に配信しなくてはいけません。とりあえずTV局に電話をしてみて、CMを出したいです!と話をすれば良いのでしょうか?
そんな風に、広告を出すまでには非常に多くの手間や、専門的なマーケティングの知識・スキルが必要になります。全ての会社が、自分たちで情報や戦略を立て、それを成し遂げられるかというと、そうではありません。
そこで「広告代理店」が登場します。
―そういった業務を全て肩代わりするのが、広告代理店の仕事ということですね。
梅原:そうなんです。広告代理店は、そういった企業に営業をかけたり、直接依頼を受けて、広告活動を代行します。
まずは、クライアント企業の目的や予算に応じて「どんなコンセプトで広告を作るか」「どんなメディアに広告を出すか」「どうすれば成果が最大化できるか」といった、マーケティング戦略や企画を立案します。
そして、企画の詳細が決まれば、制作や配信先の確保に取り掛かります。
企画を元に、制作会社に依頼をする、タレントのキャスティングを依頼するなどを進め、実際に広告を「目に見える形」に作り上げていく。それが広告代理店の仕事です。
それと同時に大切なのが、広告枠の調整です。
すごく簡単に言えば「この商品は家族向けの商品だから、日曜18時の家族アニメのコマーシャルの時間に配信すれば、消費者が興味を持つだろう」と考えて、その時間帯に広告を流します、ということをTV局とやりとりする、といったことをしています。
そうして、依頼を受けて制作した広告を実際に配信する、というところまでを行うことで、収益を得るのも広告代理店の収益モデルの一つです。
また、先ほど「広告枠」の話が出ましたが、広告代理店はメディア側(ここではTV局)から見たときに「広告枠の営業活動を代理してもらう」という役割も担っています。
メディアの基本的なビジネスモデルは、多くの消費者が見ている情報媒体を作り、そこに広告枠を作って売ることで収益を得ることです。
例えば、「この番組は100万人が見ているので、このタイミングでCMを出したら、100万人の消費者がその商品を認知しますよ」といった具合です。
その広告効果に見合った収益を得ているんですね。
しかし、メディア側から考えると、広告を出したい企業を1社1社探して、営業をして、取引をするというのは大変です。
なので、メディアは広告代理店に広告枠を一括で提供することで、効率的に広告枠を営業・販売してもらう、ということをしています。
広告代理店は、その販売代理においても手数料を得ることで、収益を得ています。企画・制作の代行はもちろん、クライアント企業と、メディアを繋ぐ役割をも果たしているんですね。
営業?事務? 広告代理店、入社後の具体的な仕事内容とは
―広告代理店の仕事について、全体像が把握できました。
広告代理店・広告業界といえば就活生は「クリエイティブな仕事」だったり「営業は飲み会とコミュ力」のようなイメージをお持ちでしょう。しかし、より具体的な「個人の仕事」にフォーカスを当てると、どんなことをしているのでしょうか?
梅原:広告代理店の仕事は、大きく「営業」「プランナー・スタッフ」の2つに分かれ、先ほどの一連の流れを、分担して行うという形になっています。
まずは、営業。営業の仕事の基本は「クライアントから案件を頂いてくること」です。
クライアント企業は、「広告を出したい」と考えた時に「広告代理店に依頼をしよう」と考えるわけですが、依頼先の候補はたくさんありますよね。
電通、博報堂、アサツーディ・ケイ(ADK)といった、大手の3大広告代理店であったり、近年はインターネット広告代理店業界の雄として、サイバーエージェントやオプト、セプテーニといった企業群も。
また、後で詳しくお話しできればと思いますが、近年ではアクセンチュアやデロイトといった大手コンサルティングファームも、広告代理店としての業務を行なっています。
そんな中、クライアント企業に「数ある広告代理店の中から、ウチに依頼してもらう」という努力が必要になるわけです。
クライアント企業に依頼をいただくために、自社のメリットを様々提案したり。営業活動を通じての、日頃の関係性が有利に働くこともあるでしょう。
また、クライアント企業が、代理店たちに企画案を出させ、良い企画を出している広告代理店と契約をするという、コンペ形式での契約もあります。
そういった中で、様々な営業努力を行い契約を勝ち取る。また、コンペの際には営業がプランナー・スタッフを巻き込んで、良い企画案を提案し契約を勝ち取る。そんなことが、営業の最も重要な仕事と言えるでしょう。
―いかに契約を取ってくるかという、まさに「営業」の仕事ですね。
梅原:また、契約を取ったら終わり、ではなく、その後の案件統括も担当します。
クライアントの目的や意図をきちんと汲み取った広告を作るために、各メディアのプランナーのアサインを行う業務の他、企画・制作の全体的なサポート、制作全体のスケジュール管理などの業務も非常に重要です。
広告代理店、プランナーの仕事内容は?
―営業の仕事は理解できましたが、プランナーの社員はどんな仕事をしているのでしょうか?
梅原:プランナーの仕事内容は、簡単に言えば「広告を実際に作り上げること」ですね。
前提として、プランナー・スタッフの部署は、かなり細かく分かれています。
クライアントの広告戦略全体を設計する「戦略プランナー」、そしてメディアごとに企画・制作を行うため「TV担当プランナー」「雑誌担当プランナー」「デジタルメディア担当プランナー」「イベント担当プランナー」など、それぞれ専門のスタッフ職が設けられています。
また、加えて挙げるとすれば、専門的にクリエイティブ制作を行っている、コピーライターやアートディレクターなどの「クリエイティブ職」、企業活動を支える、経理・法務・総務などの「バックオフィス職」なども挙げられます。
―そうした様々な部署がある中で、それぞれがどんな仕事をしているのでしょうか?
梅原:案件の規模や性質によっても異なる、という前提はご留意いただきたいのですが、基本的なフローを解説しますね。
まず案件が決まった際に活躍するのは「戦略プランナー」です。
クライアント企業の意図や予算などの情報を、営業担当者から戦略プランナーに共有し、全体的な方向性を決めます。そこで、広告のコアとなるアイデアを決める、各媒体への予算の配分を決めるといったことが行われます。
今回はこんなイメージの広告を、これくらいの予算配分に従って、テレビと雑誌で出そう、といった具合ですね。
それが決まれば、次に活躍するのが「各媒体のプランナー」です。
TV担当のメディアであれば、具体的にどんなCMを作るのか、どの局・時間帯の広告枠にCMを出すのかなどのプランを考えた上で、実際に制作へ。
制作会社への依頼や制作状況の管理、成果物の管理やブラッシュアップなどを行う他、テレビ局に広告枠の確保の依頼などを行い、実際に広告配信ができる状態を目指します。
また、コピーライターやアートディレクターも同様に、プランニングに基づいて、必要があれば適宜クリエイティブを作っていきます。
こうしたフローを通じて、消費者の皆さんが目にする「広告」が出来上がっていくんですね。
これが、営業から制作が行われる一連の流れです。
また、経理・法務などのバックオフィス職の業務は、皆様がイメージしているものから、あまりズレはないとは思いますので、詳細は割愛します。
「地味な仕事」だと思われてしまいがちですが、広告代理店として企業活動を継続していくための要となる、非常に重要な仕事です。
広告代理店でのキャリアは?
―ありがとうございました。お話いただいた内容で、広告代理店の基本的な仕事内容は、理解できそうですね。
では、営業・プランナーなどの仕事がある中で、入社後はどのようなキャリアを歩むことになるのでしょうか?
梅原:企業によっても違いはあると思いますが、総合職として入社すると5〜6割が営業、3〜4割がプランナーとして配属をされ、その中で細かい部署への振り分けが行われます。そして残りがクリエイティブやバックオフィス系の部署に配属をされますね。
本人の適正や志向性によっても変化をしますが、基本的には2〜4年ほどのスパンで、ジョブローテーションをしていきます。営業・マスメディア・デジタルメディア・戦略など、様々な経験を積んで、一流の広告マンを目指しましょうというキャリアです。
そして、プレイヤーとして一連の業務を経験した後は、マネージャーとしての活躍を求められるのが基本です。小規模なチームをまとめるリーダーを経験し、部署全体をまとめるマネージャーへとキャリアアップしていきます。
広告代理店の営業は接待・体育会系? 採用要件と求める人物像
―なるほど。具体的な仕事内容をイメージできたところで、話は少し変わるのですが。
「広告代理店の仕事内容」といえば、広告業界には「飲み会がすごい」といった特有のイメージあり、心配しているという就活生も多いと思います。
その辺りをリアルをお伺いしてもよろしいでしょうか?
梅原:まず、飲み会・接待というイメージですが、部署であったり、担当先によって大きく変わるかなと思います。
例えば「営業」の仕事。取引先の方々と飲みに行くケースは多いですが、「取引先の方々が飲み好き」という場合は、ある程度イメージに近く「激しい飲み会」もあるかもしれません。
もちろんその反対のケースもありますから、取引先の業界や社風にもよるのかなと。
これは広告代理店に限らず、どこの業界でも一緒かもしれませんね。
プランナーで言えば、担当媒体の方々や、制作会社の方々と飲みに行くケースは多いです。ざっくりとしたイメージでは、テレビ業界の方は飲み会好きというイメージがありますね笑
広告代理店といえば、コミュニケーション力がものすごく高い人・宴会を盛り上げられる人、というイメージがあるかもしれませんが、うちの会社では、そういった人は2〜3割といったところでしょうか。
近年では、大手広告代理店はどこも「デジタル」や「戦略」に力を入れているので、一般的に落ち着いたイメージのある「理系院生」などの採用も増えていますし、世間一般で言われている業界のイメージと100%合致するかと言えば、そんなことはないと思います。
―そうなんですね。接待などもありながら、落ち着いた人も数多く在籍していると。そういった点を踏まえて、広告代理店に向いている人、活躍できる人はどんな人だとお考えですか?
梅原:色々な観点があるので、まとめて話すのは難しいのですが、私が特に大事だと考えているのは「人のために行動できること」「物事を改善するという思考を持っていること」でしょうか。
広告代理店の仕事のメインとなるのは「お客様がマーケティングで困っていることを解決し、改善すること」です。
根底にその意識を持った上で、営業・プランナーが一丸となって、お客様の課題を解決していく。どんな企画を立てて、どんなクリエイティブを制作すれば、お客様の意図した通りにマーケティングが行われるのか。
その気持ちを強く持っている人ほど、細かい点にまでこだわった質の高いアウトプットを生み出し、成果を出していると感じています。
もしかしたら、広告代理店以外の仕事であっても共通することかもしれませんが、そういった志向性・気持ちを根本に持っていることが、一番の基礎として重要なのかなと考えています。
また、小言を言うようで恐縮ですが、広告代理店業界を志望する就活生の皆さんの中には「クリエイティブな仕事がしたい」とおっしゃる方がいます。
もちろん、広告のプランニングなどにおいては一定の「クリエイティビティ」も必要です。しかし、そのクリエイティビティは、お客様の課題を解決するために必要なものであって、自分がカッコいいと思うクリエイティブ、素敵だと思うクリエイティブを自由に作る仕事ではない、ということを覚えておいていただきたいのです。
仕事は、自己満足で終わってしまっては意味がありませんからね。
―梅原さん、ありがとうございました!次回は業界の変遷を踏まえた広告代理店の今後の展望について、お話を伺います。
梅原さんが広告業界について語る記事は以下から
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