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五大商社に行きたい企業は1社もなかった【東大就活生のホンネ】

旧帝大から早慶までの「上位5%」に属する、最優秀層の就活生にキャリア選択にまつわる本音を聞く本シリーズ。今回、インタビューしたのは、東京大学4年生(文系、19卒、男性)のNさんだ。有名外資系戦略コンサル2社、五大商社1社から内定を獲得しながらも、いずれも辞退したという。その本音とは? 「外コン」に対する本音に迫った前編に引き続き、後編では「商社」について本音を聞かせてもらった。

「ただ合理的な会社」に魅力は感じない

―前編では、超有名外資系戦略コンサル2社から内定を獲得しながら、「もう外コンはいいや」と結論されるまでの話を聞きましたが、その後の就活は?

Nさん:そうですね、8月の時点で「もう外コンはいいや」となって、9月からは事業会社のインターンに参加しました。事業会社の魅力は、具体的な事業を通じて自分たちの手で社会に何らかの価値を届けられることです。特に「人材輩出会社」として世界的にもよく知られる外資系日用品メーカーのインターンは、とても楽しかったですね。専門職採用でマーケティングを希望していたのですが、実在の商品に基づいて戦略を立てさせてもらえたりして。

―他に魅力を感じたインターンはありましたか?

Nさん:事業会社では、あるIT系ベンチャーD社のインターンに参加しました。一番充実感を覚えたのは、D社でした。インターンの内容自体は他社とそれほど変わらないのですが、何より社員のみなさんに「熱い想い」があったんです。どんな想いを持って、未来の社会を変えていきたいかを、社員一人ひとりが真剣に語る雰囲気がありましたね。そこに身を置いていると、とてもワクワクしました。ただ合理的にビジネスを成長させていくだけではない、「熱い想い」があるかどうかが、自分のキャリア選択では重要な基準なんです。パッションのない会社は、最後の最後で大きくドライブする力がないですから。

商社に就職した先輩が「まじでつまらん」

―秋冬のインターンでキャリアに何も求めるかが明確に見えてきたようですね。その上で商社を受けることにした理由は?

Nさん:そうですね。かなり絞られてきました。秋冬からは、興味のある大手を3社だけ受けました。いずれも「人気企業ランキング」だと上位にラインクインしている企業です。そのうちの一つが、商社Cでした。そもそも商社に対しては、ネガティブなイメージはありませんでした。ビジネスのスケールも大きいし、業界自体も変わらなければ生き残れないという危機感があったので、冷やかしではなく就職先としてちゃんと興味を持っていました。

―商社Cといえば、五大商社のうちの一つですね。他の商社には興味がなかったんですか?

Nさん:一応、他もリサーチはしました。1社につき5人くらいはサンプルを集めて話を聞きましたが、「(内定をもらったら)行く可能性があるかも」と思えたのが、その1社しかなかったんです。

―リサーチの結果を教えてください。

Nさん:まず、華やかなイメージがある商社Aは、ひと言で表現すれば、年次関係なく「しょうもない人」が多かったですね。要は、女の子にモテることしか考えていない。「仕事、つまんねえ」とこぼす人も多い印象でした。中には「仕事はつまらないけど、"商社"というコミュニティに属していること自体が価値なんだ」と断言する社員までいて、正直この価値観にはついていけないな、と思いました。仮にステイタスがあって周囲からちやほやされても、10年後には絶対飽きてますよね(笑)。

―商社といえば、商社Bが五大商社の中でも特に人気ですが、リサーチされましたか?

Nさん:もちろん。商社Bに関しては、商社Aよりまじめな人が多い印象で、「自分たちこそ、日本のトップだ」「自分たちの仕事が日本を動かしている」という意識があり、その組織に属していることへの誇りが感じられましたね。

ただ、引っかかったのは、「君も(トップ商社である)うちの一員にならないか」というトーンで常に勧誘をしてくる点でしたね。社員のみなさんはどなたもプライドを持って働かれているのですが、そのプライドの根っこが、自分が日々取り組んでいる仕事ではなく、「商社Bに属していること」にあるんだな、とわかり違和感を覚えました。

―こうして商社Aと商社Bが志望企業から外されていったんですね。

Nさん:加えて、商社Bに入社した一つ上の先輩が、めちゃくちゃつまらなさそうに仕事している姿を目にしたのも、大きかったですね。東大でバリバリ体育会系でやっていた精力的な人なのですが、会えばいつも「まじでつまらん」と暇そうにしている。

とても優秀な頭脳が、日々議事録を作ったり、書類に印鑑を1センチたりともずらさず押したり、そんなことに腐心している様子に魅力はないですよね。「社会人1年目でやれることは、このくらいしかない」「大きな組織で出世するのは時間がかかるから、今は耐えるしかない」と心のどこかで思考停止していなければ、あの環境でやっていくのはきついと感じました。

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商社の「10年で一人前」に耐えられない

―では、商社Cを受けることに決めた理由は?

Nさん:最終的に本選考に進んだ商社Cは、商社の中ではベンチャー気質で、配属先の希望も柔軟に聞いてくれるという情報がありました。一般的に商社では、最初の配属で「鉄」に決まれば、定年まで40年間ずっと鉄というケースもザラだそうですが、商社Cは違いました。

―実際に選考に進まれてどうでしたか?

Nさん:最初は、商社Cにはどんな志のある素敵な人たちが集まっているのだろう、と内心楽しみにしていました。ところが、選考で「商社は(他業界より)タイムスパンが長いから、10年で一人前になる。だから、(人材は)長い目で育てるよ」と言われて、「10年かあ〜、長すぎる」とがっくりきましたね。「育てられなくても、自分で勝手に育つわ」と。

選考が進むにつれ、面接で年次の高い人たちが出てくるようになります。その時に「マネジメント側の考え方が古いな」と痛感する場面が何度かありました。ザ・オッサンが次々と出てきては、「君はどういうキャリアを考えているの?」というような質問を投げかけてくるのですが、答えているうちに「こいつらに、選ばれてたまるか」という気持ちになってきて(笑)。内定はいただきましたけど、結局辞退しました。

―面接を通して「内定をもらっても辞退する」と判断に至ったわけですね。

Nさん:外コンを受けていた時も、商社を受けていた時もそうですが、面接や面談では基本的に「落ちるなら落ちてもいいや」という気持ちで、言いたいことを正直に伝えるようにしていました。自分を偽ってまで内定をもらいたいとは、まったく考えていませんでした。

それもあって、面談や面接では社員の方をあえて試すような質問もよくしていました。たとえば「どういうキャリアを考えているの?」と聞かれたら、「逆に◯◯さんはどういうキャリアをお考えなんですか?」「どういう想いでこの会社で働かれているんですか?」などと聞き返してみたり。自分の能力に不安はなかったので、自分をそのまま提示した結果、相手が「こいつはうちに入っても幸せになれないな」と判断して落とされるのは構わないと思っていました。

「大手」にこだわりは全くない

―商社は今も昔もエリート就活生に人気の企業ですが、就活を終えたNさんは「商社」をどのように見ていますか?

Nさん:これは、会社に関係なく商社全体に感じたことですが、お会いした社員のみなさんが全体的に「前のめりになっていない」ですね。たとえば、年次が上で中間管理職的ポジションに就いている方々の中に、自分が組織でどういう立ち位置にいて、社会に対してどういう価値を届けていると語れる人が皆無でした。私がそういう話をしようとしても、どこか引いていて、何の話をする時も「現実的に考えて......」が接頭詞としてついてくるんです。

商社マンのキャリアとしては順調に来ている方々ばかりだと思うのですが、それでも一歩後ろに引いてしまっていて、「前のめりな感じ」や「社会に対するパッション」みたいなものは感じ取れませんでした。

―最終的には、どの企業に入社するつもりですか?

Nさん:外コンと商社は内定を辞退して、現時点で大手1社と、ベンチャー1社の内定を持っています。どちらも配属先などが分かってきたタイミングで、入社する会社を決めるつもりです。

私自身は、大手かベンチャーかにこだわりはないんです。ただただ、仕事を通じて社会に新しい価値を提供できる場所で、共にパッションを持って動ける仲間と仕事がしたい。日本全体で仕事に対する価値観が変わり、誰もが月曜日を楽しみにできるような社会にしていきたいんです。大手かベンチャーか、はたまた起業か。どれも、そのための手段でしかないと考えています。

―外コンと商社から内定を獲得しながらも、いずれも辞退した東大生Nさんのキャリア観、いかがでしたか? 「上位5%の本音」では、引き続き、日本の未来を支えるエリート人材の選択に迫ります。次回もお楽しみに。

(構成:青山裕子)

ーNさんが「外資コンサル」について語った前回記事は以下から

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