理系学生の一般就職は、ハードルが高いのか?
「大学受験の時に理系を選んだけど、研究に対してそこまで打ち込めない」
「でも、理系学生が一般就職(文系就職)をするのは難しいのでは」
理系の学生と接していると、そんな声を聞くことがあります。
しかし、このまま研究職になるのも...と思っている方も多いはず。
そこで今回、理系学生を中心にキャリアアドバイスを長年行なっているOさんに、お話を伺いました。
「理系学生は一般就職をすべき」「外コン・メガベンチャーは理系学生を欲しがる」と語るOさんの真意に迫ります。
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キャリアアドバイザーが語る、理系就職の現状
―本日はよろしくお願いします。Oさんは長年、理系就活生の就活アドバイスをして来たとお伺いしています。
Oさんは「理系学生はもっと一般就職を志してもいい」とお話しをされていますが、その理由はどんなところにあるのでしょうか?
Oさん:私が「理系学生は一般就職をしろ」と話しているのには、2つの理由があります。
1点目はシンプルに「専門が自分に合っていない」という学生や、「自分の専門に沿って就職をしたが、キャリアに満足していない」という社会人に数多く出会っているから。
そしてもう1点は、「理系学生は就職活動において企業に高く評価される」ということ。
先ほど話したような悩みを抱えながら「一般就職は難しいのでは」あるいは「研究で忙しいから就職をしてる暇はない」などと思って、自分のキャリアを狭めてしまわないでほしい、という想いがあるからです。
―確かに、理系学生にとって一般就職は難しい、というイメージもありますね。
Oさん:そうですね。理系学生と言えば、理系は大学院に進学し、その後研究室推薦で企業に就職する、というイメージが根強いのではないでしょうか。
実を言えば、世間で言われているほど「理系=推薦就職」ではないという現状もあります。
例えば、少し古いデータになりますが、理系学生がサマーインターンに参加する割合は約7割程度というデータもあります。肌感では、もうちょっと低そうなイメージもありますけれど。
ただ、理系学生の多くが、一般就職もある程度見据えた広いキャリアの視野を持っていることがわかります。
しかし、これは専門や研究室によって、大きく幅があります。
工学部などは、どの学科も一般就職への感度が割と高い一方で、理学部、特に化学や物理学といった学科においては、一般就職の道を考える人は非常に少ない。
それこそ、一般就職の道を歩む学生が数%しかいないという環境も存在します。
そんな中、先ほど1点目として申し上げたように「研究室で頑張って実験はしているけど、楽しいとは思わない」というような学生が数多くいるのも現実です。
大学受験をする際は「偏差値で大学を決めた」「理数系の科目が得意だったから理系を選んだ」というような人が大多数ではないでしょうか。
「理系でどういう研究をするのか」「そこに進学すると、どういうキャリアを歩むのか」という観点をすごく深掘りして入学したという人は数多くないでしょうから、そういったミスマッチが起きてしまうのも当然です。
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理系学生は、もっと一般就職に自信を持っていい
―単純に言ってしまえば、そういう学生は一般就職という道を選んだ方がいいんじゃないか、ということですね。
Oさん:そういうことです。
もちろん、今の研究が好きだという人もいるでしょうし、研究を続けて知識や経験を身につけ、それを活かして社会に還元することも意義深いことです。産業を支える基盤にもなっているでしょう。
だから、誰彼構わず「一般就職をしろ」と言いたいわけではありません。
でも、現状の環境に満足していない中で「そういうものだから」と大学院への進学を選び、研究に取り組み、推薦で研究職を選ぶ。そういったキャリアを選ぶのは、幸せとは言い難いかもしれません。
なので、まずは先ほどの「理系学生は、一般就職をもっと考えよう」という話になるわけです。
ただ、そこにはハードルがあるのも、理解しています。
「理系就活生が一般就職をするのは難しいんじゃないか」というイメージであったり。
あるいは「理系で一般就職をする人が少ない」という現状から、不安になってしまったり、周りと情報共有をしながら進めることができなかったり。
しかし、そういったハードルも、実は簡単に超えられるということを知ってほしい。理系就活生は、一般就職でも内定を取れる。文系の学生よりも有利といえるポイントが多々あるぐらいです。
それを知った上で、自信を持って一般就職に挑んでほしいと思うんです。
理系学生は、外資系やメガベンチャーから引く手数多?
―自信、ですか。外資系コンサルや投資銀行といった業界にでは理系院生の採用が多いというのは、なんとなく耳にしたことがありますね。
Oさん:そうですね。理系特有の利点として、理系学生は「論理的思考力」が強いと言われていて、多くの企業から評価をされやすいです。
例えば、「研究・実験」の進め方は、「仕事」の進め方に似ていると言われています。
論文を読み知識をインプットし、仮説を立てて、実験をして、結果が出る・出ないを知る。そして、成果が出なければ、新たな仮説を立てて次の実験に進む。
このフロー自体が、ビジネスの進め方にそのまま流用できるケースは数多くあります。
例えば、一般的に理系のイメージとは遠い「営業」。営業においては「顧客のニーズを捉える」「最適な提案をする」など、様々なポイントがあります。
顧客のニーズを引き出す時に、「こういったコミュニケーションを取れば、相手の深いニーズを知ることができるかもしれない」と仮説を立てて、実行する。そうして、結果を見て、やり方を変えていく。
そんな風にして、営業活動を一つひとつ改善して行くことができるでしょう。
こういった改善は営業以外の職種、マーケティングにしろ、事業立案にしろ、活かすことのできる能力ですから、そういった改善行動自体に慣れていること自体が、評価の対象となるのです。
そうした活動を数年間地道に続けているわけですから、考える力が高かったり、本質的なポイントを見抜く力が非常に高い。
外資コンサルティングファームやメガベンチャーなどの企業は、こうした能力を重視して採用活動を行なっていることが多く、中には内定者の半数以上が理系学生であるという企業もあるほどです。
―確かに、理系学生といえば、論理的思考力のイメージです。数学や物理といった「論理」に強いのも、イメージの一端になっていそうですね。
Oさん:他にも、単純に「研究室」という、高いコミットと成果を求められる環境に慣れていることも評価のポイントとなりますね。
外資系企業やベンチャー企業は激務、と言われるように、そもそも業界のベースとして高いコミットが求められますから、理系というだけである程度それが担保されているというのは、採用側から見て評価のポイントとなるでしょう。
そういったところが、理系学生が評価されているポイントですね。
ただ、もちろんこれは理系学生一般のイメージであって、学部・学科であったり、研究室の風土やスタイルによっても異なります。もちろん人によっても適性や強みは異なります。
ですから、理系学生の皆さんは、まず自分のどんな能力が、強みになり得るのかという観点で、内省をしてみると良いでしょう。
圧倒的な「考える力」を活かして外資系コンサルティングファームやメガベンチャーに就職して活躍している人もいれば、その力をベースとして、他の能力を活かして営業職や人事担当者として活躍している理系院生も大勢いますから。
理系学生は、効率的な就活を意識しよう
―「理系院生=賢い」というイメージだけでなく、きちんと自分の特性を振り返っていれば、一般就職でも評価されるチャンスは多分にあるというわけですね。
逆に、理系学生だからこそ、一般就職の際に気をつけるべき部分はありますか?
Oさん:まず一つは、やはりキャリア観の醸成という部分では、文系の学生と比較した時に不十分であることが多いようです。
そもそも推薦就職を前提としていたので、一般就職をするということを考えておらず、就活への準備が不十分な人は多いです。
あるいは、研究室の都合でまとまった時間が取れなかったり。担当の教授から「就活なんてするな」と言われるケースも、少なくないようですね。
そういったことが理由で、自己分析が進んでおらず、どういった軸でどういった会社を選ぶのかがわかっていない学生がいたり。
見ている・知っている業界や企業の幅が狭く、自分がどういった環境で仕事をすればいいのか、という部分の理解が少ない学生がいたり。
―理系ならではの準備不足で、ビハインドを負ってしまうわけですね。
Oさん:その結果「なぜ研究職ではなくて、うちの会社への入社を志望するのか」という理系学生にはよくある質問に、論理だてた回答をすることができない。
あるいは、志望動機を話した際に「それってうちの業界・会社じゃなくてもできるよね?」といった、よくある質問に、正確な回答をすることができない。
そうしたポイントで、企業から「この学生はうちの会社に強い熱意があるわけではない」と判断されてしまったり、「論理だてて事象を整理することができない学生である」と判断されてしまうこともあります。
そうしたら、せっかく考える力や、物事に取り組む力ではどの学生にも負けないのに、選考で落とされてしまうわけです。
ですから、時間を取るのが難しい中でも、きちんと就活への対策をする、それが一番の対策になります。
一般的な就活生と同じように、きちんと自己分析をして、企業分析をして、就活の軸を定めていく。
そういった努力はもちろん、効率的に就職活動を進めることもポイントになります。
がむしゃらにエントリーをして、手当たり次第に説明会に足を運んで、としていては、ただでさえ少ない時間が無駄になってしまいます。
先輩内定者に、気をつけるポイントを聞いたり。就活コミュニティなどで情報を交換したり。あるいは、合同説明会や合同選考会など、短時間で業界・企業理解を深められるイベントに参加したり。
そういった手段で、できるだけ効率的に就活を進めることが、理系学生には必要でしょう。
また、もう一つの理系学生の注意点として「周りに仲間が少ない」ということが挙げられます。
例えば、そもそも学部に一般就職をする人が少なく、情報交換ができない。研究室が一般就職に否定的で、周りの学生にも白い目で見られる。一人で就職活動を続けて行くことが辛くなってしまうという学生も少なくありません。
そんな時も、先ほど話したように、なんらかのコミュニティやイベントなどで、同じように一般就職を志す学生と接しておくとよいでしょう。
情報交換にもなりますし、自分の心の支えにもなりますからね。
―自分の強みをきちんと見極めること、そして、効率的に就職活動を進めること。これが理系学生の就活法と言えそうですね。
Oさん、本日はありがとうございました。
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▼インターンに参加するために、効率的な対策をしよう