「総合商社」の事業内容は?基本的なビジネスモデルを理解
就活生から非常に人気の高い総合商社。しかし、そもそも総合商社とはどんな会社なのかの理解はできているでしょうか?
まずは簡単に商社のビジネスモデルをおさらいしておきましょう。商社のビジネスモデルのメインとなっているのは「トレーディング」と「事業投資」です。
まずは「トレーディング」。簡単に言えば、何らかの商材を「安く仕入れて、高く売る」ことで利益を得るビジネスモデルです。
例えば、ある日本の鉄鋼会社が、材料となる「鉄鉱石」を海外から安く大量に仕入れたいと考えている時。
世界には、鉄鉱石を生産している鉱山や、鉄鉱石を販売する企業は数多くあります。
果たして、どこから鉄鉱石を購入すればお得なのか。海外から日本に鉄鉱石を輸入する際に必要な特別な手続きなどはあるのか。そうした知識を持っていない鉄鋼会社の社員が、1件1件電話をして、取引をするのは非常に大変なこと。
それを代わりに行うのが、商社の仕事です。トレーディングの専門家として、日本から世界への様々な販路を知っていて、取引のノウハウもわかっている。そういった商社に、日本の生産拠点に対して材料の仕入れを依頼することで、鉄鋼会社は業務を効率化できるのですね。
商社はその仕事において、できる限り商品を安く仕入れ、そこに金額を上乗せして販売することで、利益を生み出しているのです。
そしてもう一つが「事業投資」です。
事業投資を簡単に説明すると「ある企業に出資をすることで経営に参画し、その企業を成長させることで利益を生み出す」というものです。
すごくデフォルメをして説明すると、ある企業を100億円で買収し、経営に参画する。その企業が成長し、企業価値が120億円になったとすると、20億円の利益が生まれていることになる、といった具合です。
また商社は、複数企業への投資シナジーによってその利益を増やす、ということも視野に入れた事業投資を行っています。
例えば、三菱商事、伊藤忠はコンビニエンスストアへの事業投資を行っています。つまり、コンビニエンスストアに事業投資をすると同時に、運送会社に事業投資をする。先ほどの例と同様に、1件につき20億円儲かったとすると、40億の利益です。
しかしそれだけではなく、自社が出資するコンビニエンスストアで売る商品を自社が出資する運送会社で輸送する、といったフローを組織化しコストダウンをすることで、より効率的な経営を行い、さらに企業価値をあげ利益を増やす。そういった投資シナジーを考え投資をすることも総合商社は行っています。
以上が、総合商社の事業のごく簡単な説明になります。
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総合商社各社の「違い」を知る企業分析をしよう
では、そんな総合商社ですが、日本では三菱商事・三井物産などをはじめとした「5大総合商社」が有名ですよね。では、それら総合商社各社には、どういった違いがあるのでしょうか?
選考において「なぜ同業他社(三菱商事など)ではなくて、うちの会社を志望するのか?」「なぜうちで仕事がしたいのか?」という質問が頻出である、そんな話を聞いたことがある就活生も多いのでは。
総合商社業界を志望する就活生の皆さんは、この質問にどう答えますか?
総合商社は事業領域が広く、メイン事業も似通っていることが多いため、この質問にはっきりと答えるのはそう簡単ではありません。
こういった質問に備えるためにも、各社の違いを理解しその総合商社を志望する理由を、仕事と結びつける必要が有ります。
本記事では、企業の選考前に知っておきたい総合商社の比較のポイントについて解説します。
基本となる総合商社各企業の情報に加え、「攻めの企業分析」をするため3つの観点を合わせてご紹介するので、ぜひ最後まで読んで、気になる企業についてさらに詳しく調べて、しっかりと選考対策してくださいね。
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5大総合商社、まずは概要を見てみよう
まずは簡単なイメージを掴むために、総合商社業界の利益規模を把握しておきましょう。
総合商社は、三菱商事をはじめとした特に事業規模の大きな5つの商社を指して「5大商社」と呼ばれることが一般的です。2017年度の7社の連結純利益の合計は約2兆円。数ある業界の中でもトップクラスの規模を誇ります。
では、5大総合商社、各企業の規模感はどのようになっているのでしょう? 下記のグラフで確認をしてみましょう。
商社業界といえば、三菱商事が一番!そんなイメージを持つ方がいるかもしれません。
確かに2017年度を見てみると、三菱商事が圧倒的に1位の利益額です。しかし、年によっては三菱商事が最下位だったり、伊藤忠商事が安定して上位にいたり、そんな状況がなんとなくわかります。
では、外観を見たところで、なぜこのような変動が起きているのかを考えて見ましょう。
実は、そこには各社の得意な事業領域の違いがあり、それを知ることで、各社の特徴をも知ることができるのです。
総合商社、比較のポイント1:各社の得意な事業・専門を理解する
「各社の得意分野」は、総合商社を比較する時の基本中の基本となっています。 それを知ることで、各社ごとの違いを知ると同時に、各社の安定性や専門的な知見を持つ分野についても知ることができます。
これまでどんな事業に専門性を持ち、利益をあげてきたのか? その事業は安定した利益か、アップダウンの激しい領域か? その事業は将来的に成長しそうか?
このような視点で得意分野を見ることによって、各社の現状のより深い理解&総合商社としての将来性が比較できます。
まずは、2017年度のIR資料を基に、各商社の利益を挙げているセグメントTOP3を見て、どの分野に強みがあるのか?を知っていきましょう。
5大総合商社の純利益を挙げているセグメントTOP3(2017年度、単位:億円)
(出典:各社IR資料より)
三菱商事株式会社 ・金属:2,610 ・機械:852 ・生活産業:747
三井物産株式会社 ・金属資源:2,576 ・機械、インフラ:896 ・エネルギー:486
伊藤忠商事株式会社 ・金属:825 ・食料:805 ・機械:571
住友商事株式会社 ・メディア、生活関連:935 ・資源、化学品:785 ・輸送機、建機:723
丸紅株式会社 ・生活産業:735 ・素材:419 ・電力、プラント:396
まず目につくのは三菱商事と三井物産の金属セグメントの事業規模です。2017年は資源分野の市況が好調なこともあり、本来は非資源分野の事業がメインの伊藤忠商事も金属が大きく利益を挙げています。
その他、伊藤忠商事の「食料」、住友商事の「メディア・生活関連」など、各商社ごとに目立った事業があるということもわかります。
「商社の違い」を分析するときは、まずこういった特徴的な領域で、どんな事業活動を行ってみるのかを調べることが第一歩となるでしょう。その際、ここ数年間の純利益の変化と合わせて理解をしておくとGoodです。
ここで、もう一歩応用的な分析をするためのヒント。それは「資源分野」と「非資源分野」の違いです。
総合商社、比較のポイント2:「資源/非資源」を理解する 市場の影響に強い商社はどこ?
総合商社の違いを理解するために重要な「資源分野」と「非資源分野」。まずは簡単に用語の意味から説明をしていきます。
資源分野とは?
資源分野とは主に石油や天然ガスなどのエネルギー資源や、鉄鉱石などの金属資源を取り扱う分野のことです。鉄やエネルギーは国の根幹をなす領域ですので取引額も非常に大きいのが特徴です。
資源分野に強いのは一般的に三菱商事や三井物産と言った旧財閥系商社が有名です。特に三井物産は売上に占める資源分野の割合が高く「資源商社」と呼ばれています。
非資源分野とは?
非資源分野とは資源分野に含まれない事業のことを指し、様々な商材があります。特に有名なものを挙げると、食料品や機械、住宅、繊維、情報通信事業などです。
非資源分野で最もシェアを持っているのは伊藤忠商事で「非資源ナンバー1商社」戦略に力を入れています。三菱商事も中期経営計画の中で非資源分野の事業を重要視しており、他の商社も今後さらに力を入れることが予想される分野です。
では、なぜ「資源」と「非資源」の理解が重要なのでしょうか?
先ほどのグラフをもう一度見てください。
先ほども確認した通り、2017年度利益額1位の三菱商事は、2015年に大きく利益を落とし、ワースト1位となっていることがわかります。
また、三井物産も同様に、2016年度、2017年度には高い利益額を誇っていました。にも関わらず、三井物産は2015年はワースト2位という結果に。
では、なぜこういった結果が生まれるのでしょうか?
その大きな理由の一つは「資源」の値動きの激しさです。
例えば「石油」で言えば、OPECの生産量調整や、中東の政治情勢などによって、短期間の間に価格が半分~倍に変動することもあるのです。
すると、商社が1億円で石油を日本に仕入れたのに、5000万円でしか売れない、といったことが起こり得るのです。
2015年には、まさにその「資源の急激な値崩れ」が起きてしまいました。そのため資源部門に強みを持つ三菱商事、三井物産といった企業が、大幅な減益となってしまったのですね。
資源のトレーディングという事業は、リスクも大きいということを三菱商事、三井物産だけでなく業界全体が再認識した年でした。
一方で、非資源分野はどうでしょうか。例えば、冒頭で挙げた「コンビニエンスストア」や「輸送」への事業投資が一例です。コンビニエンスストアの売上や利用状況が年によって激しく変動する、ということは考えにくいですよね。
先ほどの表を見ても分かる通り、伊藤忠商事は非資源分野に強みがある商社です。
その結果、資源暴落の煽りを受けず、安定した高利益を生み出すことができていたですね。
そういった面から、非資源分野は資源分野よりもリスクが少なく安定して収益を上げられる領域であると各商社の注目を集め、多くの総合商社が「非資源分野への注力」を掲げています。
下のグラフは2015年と2017年における、5大商社の非資源分野のみの連結純利益を比べています。伊藤忠商事はさらに非資源分野の事業を伸ばしていること、三菱商事・三井物産といった旧財閥系商社も非資源分野での利益を堅調に伸ばしていることがわかります。
もちろん非資源分野が市場の影響を受けないかと言われればそうではありません。しかし資源分野ほど大きな価格の変動がないことに加え、様々な領域でバランスよく事業を行うことができれば、一つの領域で損が出ても他の領域の利益で損失を補填することができるでしょう。
ここで、5大商社各社の2017年度連結純利益に占める資源/非資源の内訳を見てみましょう。
先ほどお伝えした通り、非資源分野に強みがある伊藤忠商事。ほぼ8割を非資源分野が占めており、今後も市場に影響を受けにくい成長が期待できます。
また、三菱商事は伊藤忠商事に迫る非資源の基盤を作りつつも、資源分野でしっかりと稼いでいます。資源価格が下落しても、非資源分野で損失を吸収できる他、もし資源価格が向上すれば、一気に6,000億円の利益にも到達するかもしれません。
このように、事業・収益の安定性といった観点から、資源/非資源のバランスは非常に注目されています。
例えば、三菱商事は中期経営計画資料において、2020年には非資源の純利益3,500億円を目指すと宣言しています。商社を比較するにあたり、今後どれくらいの事業構成を各商社が目指しているかどうかに注目してみましょう。
各社の経営方針を知ることで、どの会社が注目できるのか、どの会社に入りたいと思うのか、といった観点の一つの要素に加えることができるでしょう。 企業のホームページで「投資家情報」の項目をチェックすれば、どの企業もこういった戦略方針を明確に表明しています。選考前に企業分析する際はぜひ参考にしてみてくださいね。
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総合商社、比較のポイント3:近い将来、注目すべき事業は何か?
最後のポイントは、将来性のある事業は何か?です。
総合商社はトレーディングにとどまらず、事業投資などを通じてあらゆる領域のビジネスに挑戦している日本企業。そして、そのビジネスも世界規模で行なっているため、世界全体の変化を考えながら、将来性のある事業を見つけ、そこに参入することで利益を拡大していくことが重要です。
こういった視点を持つことで、各商社がどんな領域に目をつけているのか、各商社の将来性はどうか、といった知識を得ることができます。また、日本の総合商社業界全体の動きも知ることができます。 ここでは、商社の今後を知るために重要な社会の変化をいくつか例示します。
世界人口の変化に注目する
マクロ社会における注目ポイントとしてまず挙げられるのが、世界人口の変化です。
日本国内では人口の減少に注目がされていますが、世界レベルで見ると人口は年々増加しています。
人口が増加すれば、各国で「衣食住」の需要が高くなります。生活産業や食品部門に強い商社は、そういった国々でビジネスを行い、売上を伸ばすチャンスがあると言えるでしょう。つまり、総合商社マンは日本からより海外に仕事の軸足を動かさなければならない。
下のグラフは2008年度から2016年度までの5大商社の生活産業および食品部門の純利益の推移を示したものです。
分野の切り分けが商社ごとに違うため一概には言えませんが、三菱商事・伊藤忠商事がこの領域に力を入れ、1,000億円に近いところまで売上を伸ばしている点、住友商事や丸紅もそれを追うように売上を伸ばしていることがわかります。
さらに各社の生活産業・食品産業への注力の仕方を個別具体的に見ていくことで、将来性の一部が推察できるかもしれませんね。
環境問題とエネルギー
また「環境問題」も重要な要素です。
地球温暖化を加速させる火力発電。その燃料となる石炭・石油の取引は今後減少していく可能性があると言われています。
すると、商社のエネルギー資源部門はクリーンエネルギーにシフトしたり、石炭・石油の売上規模を縮小する動きも考えられるでしょう。
言い換えれば、今「石炭・石油」に強みのある商社であっても、数年後、数十年後にはその領域の売上が落ちていくというケースも考えられるわけです。(ちなみに、現状5大総合商社の中で最も石炭権益が大きいのは三菱商事です。)
そうした環境問題などを背景に、企業には環境や社会的規範に即して投資を検討する「ESG投資」が求められるようになってきています。三菱商事のIR情報の中でもESG投資についての資料がありますので、ぜひ目を通してみてください。
各社への取り組みから、エネルギー領域におけるそれぞれの将来性がわかるかもしれません。
テクノロジーの進化
テクノロジーの発展も、総合商社業界に良くも悪くも影響を与えています。
例えば資源を採掘する鉱山や油田では、機械による無人化が進んでおり人件費を抑えることができるようになっています。このため、商社は安い値段で資源を仕入れることができるようになってきました。
他にも、いわゆるIoTの技術によって、あらゆる情報が整理されるようになると、食品の生産・流通の効率化などに利用されたり、商社の事業がさらに効率化されるでしょう。
このように「テクノロジーの発展で成長する領域」には注目が必要です。
ただ一方で、インターネットによる世界規模の情報交換のため、従来は商社しか知り得なかった情報やノウハウが少なくなっていることも事実です。商社にトレーディングを頼っていた日本企業が、自社の力で取引や欠かせない仕事を行えるようになるかもしれない。そうすると、商社の売上は減ってしまいます。
こうしたテクノロジーの発展によって、商社業界の既存領域がどう変化していくかも、注目のポイントです。
商社のテクノロジー領域での取り組みはもちろん、社会のテクノロジーの変化を知り、商社のビジネスモデルにどんな影響があるのかを考えておくことで、それぞれの商社が今後どう変化してくるかのヒントとなるでしょう。
さて、商社の今後の取り組みを考える際に重要となるポイント挙げていきましたが、いかがでしたでしょうか。
各企業がこうしたポイントにどう取り組んでいるのか、また、どういったポイントには注力し、どういったポイントには注力しないのか、を知ることで、各社の戦略の違いや将来性の違いを知ることができるでしょう。
ぜひ説明会などで、この観点から質問をしてみてはいかがでしょうか?
*総合商社に内定をもらった先輩のESはこちら 三菱商事_ ES(2020卒) 三井物産_ ES(2020卒) 伊藤忠商事(JAL)_ ES(2020卒) 丸紅_ ES(2020卒)
事業・会社について、データだけでは読み取れない情報を取りに行こう
以上、
・各総合商社の利益規模 ・各総合商社の得意事業 ・資源、非資源分野の違い ・今後の注目領域
というポイントから、総合商社の比較観点を見てきました。これらの点と、あなたが商社に求めるポイントや仕事の仕方を踏まえて、志望動機を精査してみてはいかがでしょうか。
例えば、得意事業である「メディア」に携わる仕事がしたいから、住友商事を志望する。 非資源領域に強く、安定して利益を出し成長する伊藤忠商事をさらに成長させる仕事をするため。 資源・非資源共に高い水準を誇る三菱商事で、商社ビジネスを加速させる仕事がしたい。
こんな風に知識を増やすことで、総合商社各企業で何を成し遂げたいか、どんな環境で仕事をしたいか、といったことが少しずつ具体的になっていくでしょう。選考でも役に立つこと間違い無いでしょう。
本記事を読んで業界・企業分析を始める皆さんはぜひ、選考前に直近の決算書やIR資料に目を通し情報をまとめることをオススメします。
またもちろんそういったデータだけで、企業を判断することはできません。社風や風土など、説明会やOB訪問などを通じて、実際に社員と接することで実際の仕事像や働き方もあるでしょう。
そういった情報を得ることで、知名度や売上規模だけに囚われず、事業内容、経営計画、そして社風などを吟味してご自身にあった企業選びを心がけてくださいね。
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また、エンカレッジ編集部では総合商社業界含め、より詳しい情報を、インフォグラフィック形式で資料にまとめました。
21卒でサマーインターンに参加する皆さんは、ぜひ以下の資料も併せて確認し、しっかり選考対策をしてみてください。