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会社で偉くなるか、個人で有名になるか? エリート大学生の究極の選択【細谷 功】

細谷 功氏、連載記事第7回。これまで様々な切り口で「どんなキャリアを選択するか?」「自分の価値観や志向性はどんなものか?」を解説してきました。今回は「個人」か「組織」か。あなたの志向性はどちらなのか、確認してみてはいかがでしょうか。

「有名」「偉い」と、「個人」「集団」の関係性

今回のタイトルの「偉くなりたいか有名になりたいか?」を見て、どちらでもないという人も多いかも知れません。

ここで伝えたいメッセージというのはむしろ、皆さんの価値観として個人的な志向が強いのか、集団組織的な志向が強いのかを知ろうということです。

ではなぜそれが先のタイトルの「二択」になるのかと言えば、

・川上で実績を上げると結果的には「有名に」なる ・川下で実績を上げると結果的には「偉く」なる

ということなのです。

ですから「どっちも興味がない」という人の中には「仕事はそこそこやっておって後はプライベートを充実させる」という人がいても構いません。

ただし、いずれにしても仕事の性質を知った上で自分がどちらに向いているかは「そこそこやる」にしても重要な要素になりますから、そういう観点で今回の視点の話を参考にしてもらえればと思います。

「個人」の要素が強い川上、「組織」の要素が強い川下

たびたびこの例を挙げますが、建築物における川上と川下を考えるのが最もわかりやすいのではないでしょうか。

最上流の建築家というのは個人の要素が強いですから、建物ごとに建築家の名前があるものがよくあります。しかし、川下側の施工にいけば(元請けの)会社は大きくなりますが、そこにいる人たちは会社の名前で仕事をしているので、個人名が表に出ることはほとんどありません。

他にも、「会社という川」を例に挙げてみると、「最上流」というのが創業者ですから、たとえ小さくても会社を立ち上げて軌道に乗せれば自動的にその会社は「◯◯さんの☓☓社」という形で世に知られることになります。

しかし、創業数十年で創業家からいわゆる「サラリーマン社長」に移行した大きな会社では会社そのものは相当「有名」でも社長の名前は知らないということの方が多いでしょう(その代わりに社長は多数の部下を引き連れて黒塗りのクルマで出社するという形で極めて「偉い」存在です)。

対して特定領域でアクセス数を稼ぐYouTuberのような人たちは(あるコミュニティでは)「有名」ではありますが決して「偉い」という感じではないと思います。

医者で言えば川上である「起業」に相当するのは開業ですから、この場合多くは個人の看板で仕事をすることになり、評判が立てば必然的に「◯◯先生のクリニック」という形で世に知られることになるでしょう。

これに対して会社組織に相当する大病院では、やはり前面に出るのは組織としての実績です。もちろん医者や弁護士等のプロフェッショナルと呼ばれる人たちの組織では一般企業に比べれば個人が前面には出ますが、それでもやはり「☓☓病院の◯◯先生」という形になることが多くなります。

またこのような組織で働いている人のモチベーションは個人の実績を上げることそのものよりも組織の中で大きな仕事をしていく(=「偉くなる」)ことの方が大きいのではないかと思います。

あなたの本当の価値観は「個人」か?「組織」か?

前回の「自転車か新幹線か」のテーマでお話したように、「偉くなる」ということは大きな仕事ができることを意味しています。個人で自転車をこぎたいか、大人数で新幹線を走らせる一員(あるいはそのリーダー)になりたいかはこのような形で「個人か組織か」という形の選択肢となって具体化していきます。

就活を志す皆さんはもしかするともう暗黙のうちに「大企業」(=川下)というのが選択肢の全てになっていて、そもそも「川上」自体を選択肢として考えていない人もいるかも知れません。

もちろん川上で「個人として」食べていくにはそれなりの実力やブランドが必要になりますから、学校を出てすぐにそちらに行くのは難しいかも知れませんが、最終的に長い人生において自分の志向や価値観がどちらにあるのかは考えた上で就職活動も進めてみてはいかがでしょうか?

また社会人になった後も会社という組織に入れば、自分の価値観に合わないことがあったり理不尽なこともたくさんあります。その時に最終的に自分はどうありたいのか?を考えればそこで「正論を吐く」べきなのか、組織の論理に従うべきなのかの答えも自ずと出てきます。

実はどう考えても本当は会社組織には向いていない(私のような)人でも、一律に「良い会社に入ること」を目指して突入する就活にこのような視点を持つことは、生涯のキャリアパスを考える上でも参考になるのではないかと思います。

前回記事:ベンチャーか大企業か?を考える

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