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本物のエリートは「詰め」が違う 外銀・外コンに就職したい君たちへ【小宮一慶・後編】

30年後の社会を支える「エリート」に不可欠な資質とは何か?その問いを、各界をリードする方々にぶつけていく本連載。 今回は引き続き、人気経営コンサルタントの小宮氏にインタビュー。外コン・外銀を目指す学生たちへのメッセージをいただきました。

外銀・外コンで勝ち抜く人の共通点

―上位5%の就活生には"外銀"や"外コン"が人気です。ただ、なかにはそこに入社すること自体がゴールになっている人も少なくありません。

小宮一慶さん(以下、小宮):残念ながら、そういう会社に入っても、人生安泰にならないから(笑)。高給の外コンや外銀に就職することがゴールと思っているような人は、企業側が欲しがらないですね。実際に外コンや外銀に就職して、そのあと勝ち抜く人は、そもそも人間が違います。

―何が一番違いますか?

小宮:積極性や頭のよさもありますけれど、一番は「詰めの甘さ」がないこと。人に相談する時は事前に聞きたいことをリストにしてくる、当日は10分前に来て約束した時間内に必ず終わる。

そういう「詰め」をきちんとやります。ダメな人は詰めが甘いんです。就職先がどこだろうと、ちょっとしたことをキチッと詰められるかどうか。

---「頭のよさ」より「詰め」なんですね。

小宮:あとは、元も子もないけれど、持って生まれた能力の差もありますね。

―それを言われると、本当に元も子もない、というか...

小宮:でも、そうなんです。「持って生まれた能力」はちゃんと認識すべきです。

今、新卒で就職する人たちを見ていて「かわいそうだな」と思うのは、現在は就職環境がとてもいいから、自分の本当の実力より一段上の会社に入ってしまうこと。

すると、以前からいた社員も、後から入社してくる社員も、みんな自分よりもともとの能力が上だからとても苦労するんです。

―でも入社してから頑張る、という人もいますよね。

小宮:もちろん能力は鍛えれば、ある程度上がります。ただし、どこまでも無限に上がるなんて、そんな幻想は持たないこと。もし努力で能力が上がり続けるなら、誰だって100mを9秒7で走れるようになるはずだから。

---「いいところに入りたい」という、いわば受験の発想で、高給の外銀や外コンを目指してしまう就活生も少なくありませんが、「自分の実力」をまずは見極めることが大事なんですね。

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自分が「どの程度の人間か」を知る

小宮:またも元も子もないことを言えば、結局、自分の好きなことをやるに尽きます。

自分の得意を生かして、好きなことをとことんやる。好きな分野で、自分の能力の限界はどこなのか見極められるぐらい、やりきらないとダメなんです。中途半端にできることを何年続けても、結局、自分に何が足らないか見えてこない。

自分がどの程度の人間なのか。それを試すことを怖がっちゃダメだと思います。自分に向いた仕事、自分に向いた職場って絶対ありますから。

―「自分に合う仕事」を見つけるのが一番難しいです。

小宮:今ある中で選べなかったら、自分で作ったらいいんですよ。自分の会社を作ったら、自分がやりたいようにやれるじゃないですか。エリートなんだから、それぐらいの気概を持った方がいい。いつまでも勤め人でいようとか、そういうことは考えないで。

大企業エリート層の給料は確実に上がる

小宮:ただし、会社で働き続けるか、自分で会社を作るかは、今が見極め時です。

---というのは?

小宮:大企業のエリート層、トップ層の給料は、今後間違いなく上がります。現在の日本ほど大企業の役員の給料が低い国はない。一部の企業を除いて年間の売上が数兆円ある大企業の社長たちさえせいぜい1億~4億円しかもらっていませんから。欧米と100倍違う水準です。

---つまり、大企業で上り詰めれば、の話ですね。

小宮:でも、学者の世界を見ても同じです。日本のトップ大学で年2000万円をもらっている学者なんてほとんどいないけれど、アメリカのビジネススクールで優秀な学者なら年収40万ドル前後。

ビジネススクール以外でも同様の傾向だから、ノーベル賞を取るような優秀な学者は海外に流れていくわけですが、この流れは、ビジネスパーソンの世界でも間違いなく起こり始めています。

---日米で2倍以上の差ですね。

小宮:今なら本当に優秀で、言葉の壁も取り払われたら、みんなアメリカの大企業で働きますよね。それでは日本企業は成り立たなくなるからトップ層の給料は間違いなく上がります。

一部の企業ではすでに高額な報酬で海外から優秀な人をトップに招いているので、日本人トップの報酬も同等にしないとおかしくなる。よって、トップまで登り詰められる人は国内で働いていても、稼げるようになると思いますよ。かなり限られてはいますが。

―国内にいても常に「グローバル基準」で勝っていかなきゃいけないわけですね。

小宮:「グローバル基準」という時に、言葉のハンディキャップは問題じゃないんです。

英語はできるに越したことはないけれど、自動翻訳などをツールとしてうまく利用できる時代ですし。それに、本当に偉くなったら通訳ぐらい付きますから(笑)。

僕は英語をしゃべるのに別に不自由しないけれども、グローバル展開している企業の役員会などでは同時通訳が付いた方が楽ですよ。

グローバル基準で競争するには、言葉の問題よりも、いかに自分の等身大の魅力を見せられるかが大事です。つまり積極性です。自分をうまく表現して相手を惹きつける。それができれば、国内/国外関係なくやっていけますよ。

―日本企業だと、若手社員の積極性はつぶされるというイメージもありますが。

小宮:「つぶされる」なんて下の者の言い訳です。会社の社風を変えるぐらいの気概を持った方がいい。

部下の能力を発揮させたくないだなんて、そんなことを本当に思っている会社はないですよ。世渡りもうまくやり、会社を変えようとできる努力は全部やり切っても変わらなければ、辞めて自分で起業すればいいだけの話です。

---エリートたる者、たくましく生きろ、と。全3回にわたり、さまざまな角度から「2050年を生きる力」を教えていただき、ありがとうございました。

次回からは京都大学デザイン学ユニット特定教授の川上浩司さんに、エリートに求められる「デザイン力」について聞いていきます。

前回:「こぢんまり生きる」という選択肢はない。未来を生きるエリートへの提言 次回:究極的に人間にしかできないことは何か? 元AI研究者が出した結論

(ライター・吉岡名保恵)

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