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コンサルは分析だけの仕事ではない? NRIのベテランコンサルタントが語る、業務とキャリア

長き旅路を歩んできた有名企業のエグゼクティブ達が一堂に会し、「長く険しい旅路の数々」と「これから若者が歩むべき道のりの見通し」を熱く語ったイベント、en-courage Career Theater。今回は、野村総合研究所 中村 哲氏の登壇部分をご紹介します。 氏の経験を交えてリアルに語られたコンサルタントの業務やキャリアは、コンサルティング業界を目指す皆様には必見の内容です。「コンサルタントはスーパーマンである」と語る中村氏の真意とは?[Sponsored by 野村総合研究所]

今年も開催!Career Theaterとは?

昨年5月、キャリア支援団体en-courage主催「Career Theater」というイベントが開催されました。

そこでは「〜これからの人生の話をしよう〜」と題し、有名企業のエグゼクティブ達が登壇、「長く険しい旅路の数々」と「これから若者が歩むべき道のりの見通し」を熱くお話いただき、5月という時期ながら、1,000名近くの就活生に参加をいただきました。

en-courageでは、今年も ・5/19(土)東京:ベルサール汐留 ・5/20(日)京都:京都国際会館 にて、そのイベントを開催します。

当記事では、開催を前に、昨年の講演内容の書き起こし・編集を行いました。今回ご紹介するのは、野村総合研究所 公共プロジェクト室グループマネージャー、中村 哲(なかむら・てつ)氏の登壇部分。

「コンサルティング業界」に興味のある方は必見です。中村氏の熱い想いをぜひ受け取って頂くと共に「Career Theater」の魅力にも触れ、ぜひ参加をご検討いただければと思います。

登壇者プロフィール <中村 哲 氏(Tetsu Nakamura)> 株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部公共プロジェクト室グループマネージャー

これまで、空港需要予測や民間企業の業務改革、補助金事務局の運営等、多種多様なPJTに従事し、現在は熊本県益城町役場にて地震からの復興支援に携わる。

「コンサルタントとして、今やるべき」と感じることに一所懸命になってしまう40歳。

コンサルタントとは何者か。分析、提案、レポーティングが仕事?

中村:野村総合研究所でコンサルタントをしている中村と申します。本日は、コンサルタントというキャリアについてお話をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

皆さんはコンサルタントという職業について、なんとなくのイメージを持っているのではないかと思います。ただ、漠然としたイメージは持っているものの詳しくはわからない、コンサルタントって結局何なんだろうと思っている方も多いのではないでしょうか。

今回お話するにあたって、「コンサルタント」という単語で画像検索をしてみました。すると出てくるのは、紙の資料に複雑なグラフや統計データが載っている、といった画像です。

よく思われているイメージに近いのではないでしょうか。コンサルタントは企業の経営や経済状態について分析をして、エクセルでグラフを作り、分厚いレポートにして会議で提出する。

そんなイメージも完全に間違いではありません。しかし、それだけをコンサルタントの仕事だと思われてしまうと、ちょっと困ってしまうんです。

しかし、じゃあコンサルタントって何者だろうかと、正しく理解をされている方はほとんど居ないのではないだろうかと思います。

なので、今回コンサルタントとは何者なのか、コンサルタントのキャリアとはどういったものなのかについて、お話をしたいと思います。

コンサルタントとはスーパーマンである?

中村:今回コンサルタントとは何者かを説明するにあたって、一言でイメージを持ってもらい、それを軸に説明したいと思い、敢えて用意した言葉があります。

「コンサルタントは、スーパーマンである」

一体何のことだろうと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは偽らざる気持ちです。もう少し補足すると、「スーパーマンであろうとすべきである」とも言えるかもしれません。

では、これがどういうことなのかについてお話をしていきたいと思います。今回はスーパーマンの条件、言い換えればコンサルタントの条件として、3つの観点についてお話ししたいと思います。

まずはその1つ目から、お話ししていきましょう。

コンサルタントは、世の中のすべての課題を自分の課題と考える

中村:スーパーマンとはどんな人でしょうか?地球の平和を守るために頑張る人ですね。地球を脅かすものをやっつけ、人々を守る。

例えば、隕石が落ちてくるかもしれない。怪獣が襲ってくるかもしれない。宇宙人が地球を征服しにやってくるかもしれない。

地球に、解決しなければならない問題がたくさん襲いかかってくる。それを何とかして、すべて食い止めるのがスーパーマンの役目です。

コンサルタントもそれと一緒だと思っています。世の中に課題が出てきた時に、それを解決するのがコンサルタントです。 企業で働く人たちが、役所で働く人たちが、自分たちだけではどうしても解決できない問題に直面する。そんな時に相談に来ていただくのが、我々コンサルタントです。

その時にコンサルタントとして、「この問題なら解けるんだけど、そっちの問題は解けません」ということは絶対に言えません。すべての課題を解決しなければならないのです。

地球の危機だ、そんな時にスーパーマンが「隕石は止められるけど、怪獣は倒せないから今回は助けられない」などと言ってはいられないのではないでしょうか。なんとしても地球を救おうとするのがスーパーマンではないでしょうか。

コンサルタントも一緒です。相談に来られる方が、非常に悩んでいる。どうしても課題が解決できない。そんな時に、何としてでもその課題を解決するのが、コンサルタントの仕事です。

言い換えると、コンサルタントは、世の中に存在するすべての課題を、すべて自らの課題として考えなければならない。そんな風に仕事をしていると言えます。

あらゆるテーマの課題を解決する、コンサルタントの仕事

中村:具体的にお話をしましょう。 私は野村総合研究所で、17年間コンサルタントの仕事をしていますが、164本のプロジェクトに携わりました。

新卒で入社して、一番初めに取り組んだのは、CRM 戦略というものです。CRMとは、企業が顧客とどのようにして良好な関係を築くか、ということです。

そこから、子会社戦略のプロジェクト、ベトナムの道路計画、台湾の土地開発、業務システムの構築、組織改革など、様々なプロジェクトを経て、今では熊本県の益城町という所の復興支援を行なっております。

自分で振り返っても驚くほど、多くのテーマの仕事に携わりました。しかしこれは、コンサルタントであれば当然だと思っています。

社会には多くの種類の問題、課題が存在します。そして、社会の流れと共に、解くべき課題というのはどんどん変化していきます。そのとき、コンサルタントは様々な新しい課題に接することになりますが、先ほども申し上げた通り「その課題は解けません」と放り出してしまうことは絶対にしてはなりません。

そういった意識を持って、世の中のすべての課題を自らの課題として、解決する。それがコンサルタントの条件の1つ目です。

コンサルタントにとって、仕事の完遂は絶対である

中村:2つ目の条件は、「仕事の完遂は絶対である」ということです。当たり前だろ、仕事なんだから。そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかしこれは、コンサルタントという職業について、意外と誤解されがちなポイントです。

多くの方は、コンサルタントという仕事に、こんなイメージを持たれているかもしれません。フレームワークを使って分析をして、すばらしい提言を資料にまとめて、格好良くプレゼンテーションをして、それでおしまい。

そんなイメージがあるかもしれませんが、僕らの仕事はそれだけでは終わりません。

お客様は我々に、何らかの課題を解いてください、とご依頼に来られるわけです。課題を解くのに、プレゼンテーションや、エクセルの資料だけでその課題が解決するということは絶対にありえません。

もちろん提案も非常に重要です。しかし、その提案した内容をきちんと実行して、課題解決を達成するという最後の最後の部分までやり切るのがコンサルタントなのです。

スーパーマンも一緒です。「この計画どおりにやれば怪獣を倒せるよ、だから後は頼んだ」なんてことは言わないでしょう。じゃあ、誰が怪獣を倒すのか。その怪獣を倒すところまでがスーパーマンの仕事です。

課題は現場にある。地道な施策で目標を完遂するのがコンサルタント

中村:これも具体例を交えてお話ししましょう。

7,8年前に、保険金の不払いという問題で世の中が大騒ぎになったことがありました。保険金が払われていなければならない人に対して、保険金が払われていなかったのです。

そんな状況に対し、金融庁という役所は保険会社に対して、過去の契約をすべて見直しなさい、契約を全部見直した上で払うべき人にはきちんとお金を払いなさいと、指示を出しました。

その契約件数は1000万件以上。それを普通のやり方で見直していたのでは10年以上の時間がかかってしまいます。それを何とか1年で達成できないかと、野村総研にご相談に来られたのです。

保険の査定というのは、資格を持ったプロフェッショナルの方が行うものです。しかし、それを我々にお願いされるということは、おそらく、プロの方でも普通にやっていては、約束の期限内にはできないということです。

ですから、我々は10倍、20倍のスピードで査定を進められる新しい業務を設計しました。そしてそれを実現できるためのシステムも作りました。でも、先ほども申し上げた通り、そこで終わり、というわけではなかったのです。

そのシステムを使って、査定の完遂をしなくてはなりません。ですから、達成のために日本中から査定のプロフェッショナルに集まっていただきました。その人たちにも、これまでと全く違った新しい業務をやってもらうことになりますので、新たな業務システムを使いこなすための研修なども行いました。

そして、新しい業務、新しいシステムでの査定業務が始まりました。1日目の成果は...。通常の10倍、20倍のスピードどころではありませんでした。

1日目で処理できた件数は、0件だったのです。 後から考えてみれば当然です。それまでプロとしてずっと査定をやってきた方々にとって、全く新しい業務を指示されて、「さぁ、このやり方でやってください」と言われてもやれるわけがないんです。

業務への慣れ、スキル面といった部分だけではありません。むしろ、気持ちや感情ではなかったでしょうか。新しいシステムで保険金の判断をする。効率化はされているかもしれないが、大事な保険金の査定をそんなやり方で済ませてよいのか。そんな不安があったのではないかと思います。

そんな不安を一切解消できないまま初日の処理に入り、そしてその結果が0件。もちろん、その後は大反省会と対策会議が開催されました。

先に結論から言いましょう。約束の期限の1年後には、1000万件以上の査定をほぼすべて終わっていただくことができました。 この間、分析や資料づくりも勿論やりました。でも、一番血道をあげたことは、そういったことでも、ましてプレゼンテーションをしたことでもありません。1年間現場に張り付いて、地道な努力をしたことが成果に結びついたのです。

皆さんが不安を解消して、頑張って進めていこうという気持ちになってもらうためにはどうしたらいいのだろうか。一人ひとりが安心して業務を進めるための環境を作るために、そして皆さんがモチベーションを高められるような環境を作るために、色々な施策を考えて、現場で皆さんを鼓舞し続けたことこそが大切だったのです。

保険の査定は朝8時から夜20時まで。その間、プロフェッショナルの方が業務してくださる横で、ずーっと質問を受け続けます。

質問に答えるだけではなく、受けた質問を分析して、こういう質問が多いからこの業務フローは改善しなくてはと、システムをより良くしていきます。

夜20時には、査定の方が帰ります。そこからも大変です。その日の工程と、全ての人のパフォーマンスを見直した上で、工程のどの部分を改善すべきだろうか、各人のパフォーマンスを上げるためにはどうしたらよいだろうか。そんなことを非常に細かいところまで話し合いました。

そして、じゃあ明日はこんな施策を取ってみよう、それを理解してもらうためにミニ研修をして効率を上げていこう等と、そんな様々な準備をして、次の日朝8時を緊張しながら迎えるのです。

そういった地道な努力によって、先ほどの目標の達成を支えました。

これが、計画を提案しただけ、システムを作っただけだったらどうなっていたでしょうか。少なくとも、僕らとしては「仕事の完遂を完遂した」「課題を解決した」なんて、到底言えなかったと思います。

これが、我々に求められる「仕事の完遂」です。 スマートな資料を作り、格好良くプレゼンテーションをするだけがコンサルタントの仕事ではないと、少しイメージしていただくことができたでしょうか。

少し極端な例をご紹介したようにも思いますが、これがコンサルタントの日常だという風に思っていただければと思います。

コンサルタントは絶対に負けてはならない

中村:最後に、3つ目の条件についてお話をします。

最後の条件は、コンサルタントは絶対に負けてはいけない、ということです。これは僕のキャリアを通じて心の根元にずっと持ち続けている気持ちです。

僕は今、熊本県の益城町というところで仕事をしています。

最近では東京での報道がほとんどなくなっているので、もしかしたら記憶から薄れてしまっている方かもしれませんが、2016年の4月に、熊本で大きな地震がありました。

益城町は、震度7の地震が2度あった街です。実は、震度7の地震が2回起こった場所というのは、この日本において益城町を除いて一箇所もないんです。益城町には1万戸以上の家がありますが、被害がなかった家は1%以下です。半分以上の家が半壊、全壊し住めない状態になりました。

最近あまり報道がないので、もう復興は終わったのかな、もう直ったのかなと思われている方もいるかもしれませんが、実は全く終わっておりません。

壊れた家を撤去するだけでも、やっと今年中に終わるかなというところです。今でも、8000人以上の方が仮設住宅など、自分の家ではないところに住んでいるのです。

こういった状況において、役場の皆さんも辛い思いをしながら、必死にがんばっていらっしゃいます。役場の皆さんは、益城町が本当に大好きで、美しい町が壊れてしまったことをとても悲しんでおられます。

でも、これまで震度7の地震なんて経験したことはありませんから、何に取り組んで、どう解決すれば、住民の皆さんが元の暮らしに戻ることができるのか、暗中模索といった形で、非常に難しい取り組みをされています。

そんな状況で野村総研が、業務ではなく完全な支援として何かお手伝いできないかと手を挙げまして、2016年の6月より私ともう1名がコンサルタントとしてお手伝いをさせていただいています。

当初は、2016年の12月までに復興計画を作りましょうというお手伝いでした。無事、12月に復興計画はできました。しかし、私はまだ益城町におり、会社も行ってこいと言ってくれています。

それは、先ほども申し上げた通り、計画を立てるだけで終わってはいけないからです。コンサルタントは、最後まで完遂してこそなのです。

復興計画ができたからといって、復興は当然終わりません。自分の家に住めない8000人の方々が全員自分の家に帰れること、おそらくそれが、復興が終わるということです。

これから3年、5年、10年かかるかもしれません。先ほども申し上げた通り、役場のみなさんも必死に戦っています。震度7という地震を2度も受けて、山積みの課題に対して向き合っています。

そんな人たちが、我々を頼ってくださっている。そんな時に、「わかりません」「できません」。そんなことを言ってしまうことを、コンサルタントは絶対にやってはいけません。

だから、コンサルタントは負けてはいけないんです。住民の皆さんに貢献するために、役場の皆さんを手助けするために、我々は「負けられない」戦いをしております。

「キャリア」という言葉はコンサルタントには似合わない

中村:以上、3つのメッセージをお話ししました。

はじめに「コンサルタントはスーパーマンである」とお話しして、何を言っているんだと思われた方もいるかもしれません。しかし、コンサルタントというもののイメージを少しでも持っていただくことができたのではないでしょうか。

全ての課題を自分の課題として考える。自分の仕事は、絶対に完遂する。そして、絶対に負けられない。それがコンサルタントの働き方だと僕は思っています。

これまで、コンサルタントとはどんなものかについてお話をして参りました。最後に、私自身が思うコンサルタントのキャリア観をお伝えして、話を終えようかと思います。

もしかしたら、一般的なキャリア論とは少し違うことをお話しするかもしれません。ただ、コンサルタントというキャリアを歩もうと思っている人のために、私が思うところを正直に話したいと思います。

私は、コンサルタントには「キャリア」という言葉は似合わないと思っています。

皆さんは自分のキャリアを描く時に、色々考えられるかと思います。自分のキャリアプランはこうしたい。こういう場所で働きたい。こういうことを専門性にしたい。

でも、世の中が、顧客の皆さんが、コンサルタントに求めているものは、そういったプランに沿ったものとは限りません。最前線で次々と現れる課題に対して取り組むことになるのです。

だから、自らが良しとするキャリアに沿った、自分なりに理想としている仕事に対してのみ取り組むことのできる環境ではないとも言えます。

そんな中でも、次々現れる課題を、一生解きつづけてやろうと思えるかどうか。目の前の課題を何としてでも解決するという気概と、「自分は何も知らない」と謙虚に思いながら、一生勉強し続ける姿勢を持った上で、世の中の、顧客の、理想的な状態を追求し、より良い世界を作り上げる。

そういうものがコンサルタントの働き方かなと考えています。 とても大変ではありますが、非常に意義深く、エキサイティングなキャリアを歩むことになります。

ここまで色々な話をして、コンサルタントって大変な仕事じゃないか、と思われる方も多いのではないかと思います。そんな中でも、コンサルタントって気になるな、やってみたいなという方がいらっしゃれば幸いです。

野村総合研究所でも、2017年の5月23日より、インターンシップの募集を始めます。コンサルタントというものを実感するとても良い機会だと思うので、少しでも興味を持たれた方は、ぜひ足を運んでいただければと思います。

インターンシップでも、難しい課題に接することになるため、もしかしたら辛い思いをすることもあるかもしれません。でもその分、物凄く広大な世界が広がっていると思います。それはとても面白く、意義深い世界です。

そういった世界に共感していただける方が、この会場から出てきてもらえれば、私はとても嬉しいです。ぜひ皆さん、コンサルタントの世界を体感してみてください。

私のお話は以上です。本日はありがとうございました。