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ベンチャーキャピタリストの注目する業界・領域とは

2018年1月14日、株式会社LIFULLが主催するイベント「LEAP」が開催されました。 LEAPのテーマは「跳躍」。若い世代に「跳躍・挑戦」をして欲しい。そんな想いを込めて、日本を代表する起業家・リーダーが一堂に会しました。今回は1セッション「VCとCVCが語る投資基準」の内容をお届けします。 登壇したのは、500 Startups Japanマネージングパートナー澤山陽平さん、株式会社iSGSインベストメントワークス代表取締役代表パートナー五嶋一人さん。 数多くのスタートアップを見てきたお二人に、最近の事業の領域やチームの在り方など幅広くお話しいただきます。

澤山氏の注目する領域とは

小沼:ありがとうございます。今の話を聞いてお分かりの通り、投資家と起業家が一緒に新しい事業を作り、二人三脚で世界を変えていく、そこがVCのコミットすることですよね。

今度は、技術・領域・分野において、今後絶対来る領域、今一番興味があってワクワクする領域などをテーマとしてお話していきたいと思っております。お2人はこの点、どう考えているでしょうか?

五嶋:最近、「日本沈没」という1973年に公開された映画を観たのですが(笑)、人間の生活は、結局土地に紐づいているなあって思わされたんですね。

まあ題名の通り、日本が沈没して日本人はみんな難民として世界中に散っていく映画なわけですが(笑)、土地がなくなると国家ってやっぱり崩壊するんですね。

これは45年前の映画ですが、テクノロジーがどれだけ発展しても、やはり国というものは、土地に紐づかないと成り立たないのではないか?と。

なので、LIFULLさんの不動産の領域は本当に良いなと(笑)

小沼:弊社も、不動産は今後ますます注力していく領域ですね。

澤山:他のところで言うと、すごくエキサイティングだ、というわけではないのですが、最近気にしているのは、「紙」や「エクセル」をなくすようなサービスです。

資源が大事だ、節約だ、と言われていても、結局紙って今でも大量に使われているんですよね。

じゃあ紙でやることをPC上でやろうといって、エクセルにしたとします。エクセルは凄く便利だから色々な領域に使われますけれども、エクセルでやるべきでないことまで、エクセルでやってしまっていたりします。

その結果いろんな非効率が生じたり、結果としてそこからデータが全然活用できなかったりする領域がたくさんあるんです。

そういうところを一つひとつ潰していくのって一見すごく地味なんですが、大きな流れに繋がる可能性があると考えています。

つい最近投資したところだと契約書を自動で作成し、契約書の管理を全部クラウドにするというサービスをつくっている「LegSea」という会社があります。

契約書って締結するときにいろんな人が関わるんです。今までは紙媒体で、いろんな人から判子をもらってくるのが普通だったのを、クラウドで解決できる。

他には、 国際物流の世界で紙とエクセルを無くそうとしている「Shippio」という会社があります。

コンテナ船でいろんなものを運ぶときって保険や通関の書類など、膨大な量の手続きが必要ですし、膨大な紙を使うわけです。

三井物産で勤務していた2人が、それって非効率じゃないかと思い、ベンチャー企業を立ち上げているのですが、こういう領域はここ1、2年で増えてきています。

ITサービスやスマートフォンのサービスって、まずは消費者向けのサービスが出来上がるんですよね。中々BtoB向けのサービスには発展しない。ただ、ちょうど今、消費者向けのサービスが流通して、だんだんBtoB向けのサービスも広がってきているという時期です。

その流れから、こういったサービスが増えてきているのかなと思います。

一見地味だけど、そこから膨大なデータが手に入るようになったり、さっきの国際物流のところだと、もしかしたらそこにお金を貸すこともできるようになったりするかもしれない。

契約書のサービスも、そこから契約書が本当にあっているかどうかをAIで確認するサービスができるかもしれないです。そんな風に、さらなる発展の余地もあります。

その辺り、一見地味ですけど僕は面白いんじゃないかと思っていまして、こういうのを英語ではアンセクシーな領域みたいな言い方をするんです(笑)

確かに、聞いた瞬間に「すげぇ!かっこいい!」っていう感じではないんですが、社会全体を良くする素晴らしいサービスだと考えています。

五嶋氏の注目する領域とは

五嶋:弊社で言うと、「他のVCがやらない領域」というのも、魅力的な領域です。

いまはスポーツとエンターテインメント、特にライブ・エンターテインメントはいいと思います。投資対象としてはもちろんですが、ベイスターズに続いて、スポーツやエンタテイメント領域のカテゴリトップの企業を巻き込んで、産業全体の発展に貢献できればいいなと思っています。

それから、日本は世界最先端の高齢化社会なのでヘルステックは伸びるでしょうし、日本で成功できれば世界でも成功できるチャンスがある領域だと思っています。

しかし単に「健康にいいことをしましょう」だけでは成り立たないので、スポーツ領域との掛け合わせだと思っています。

ただ、若い人が「スポーツベンチャーを立ち上げるぞ」と考えても、スポーツ業界のネットワークがなく、なかなか事業が立ち上がっていかない。それは僕らが価値提供できると思っていますし、どうにかしたいですね。

「起業」・「技術」のコストはどんどん下がっている

澤山:我々も、さらに言うと「技術」のところにはもっと注力して行きたいと思っています。

ウェブだけで完結するサービスではなくて、ハードやその他技術を含めて出来上がるようなサービスにも注力しています。例えば、宇宙関連ベンチャーや、バイオテクノロジーベンチャーなどですね。

大学にある技術と、我々や起業家の経営・事業の力を組み合わせて、どんどん拡大させていきたいと。

具体例を挙げていくと、例えば「遺伝子」について。

人の遺伝子情報は、今全てを解析しようとすると、20万円ぐらいのコストがかかります。しかし、これは数年以内に1万円ぐらいのコストに下がってくると言われています。

実際に、健康の分野など、その情報を活用できる様々な領域で手を打っているベンチャーが出てきていますね。

これは、大きな流れでいうと、遺伝子の分野に関わらず同じ構造になっています。どんどんチャレンジするコストが下がっている。そもそも会社をつくること自体もそうですし、あらゆる技術のコストが下がっている。

今まではすごくお金が掛かって取り組めなかったようなチャレンジにも、実は意外とチャレンジできるんじゃないかと思います。

例えば、最近アメリカでは、超音速旅客機をつくろうというベンチャーに結構とんでもないお金がついて、これは確か、JALさんも投資をしていたはずです。あとは核融合炉をつくろうとしているベンチャーとか、そんな分野の会社も増えてきています。

今までは大きな資本や技術を持っている大企業でしかできなかったような取り組みも、ベンチャーでもできるようになっている。そんな流れが、世界的に盛り上がってきていますね。

五嶋:iSGSもモノ系にはどんどん取り組んでいて、投資先のうち4分の1超ぐらいがモノ系なのですが、実際に成果を出すまでには本当に大変ですよね。とにかく根気が必要だし。

澤山:大変ですね。なかなか実現できませんし、モノによっては世界を相手にしていかなければいけない。さっきの宇宙ベンチャーだって、国内でやったってまあ全く成り立たないわけです。

ちょっと脱線してしまいますが、それで言うと、やっぱり日本の相対的な地位は下がってしまっていて、それが僕としてはすごく悔しいんです。

500 Startups Japanを立ち上げる時も、僕が色んなところで営業して、資金を集めていたんですね。

その時に、海外の投資家に話をすると「なんで今、日本に投資するの?」「日本に投資するなら東南アジアに投資するほうがいいじゃん」って言われてしまうんですよね。

「日本にも、面白いものがあるんですよ」と薦めても「でも、ニュースに出てこないしな...」と言われてしまう。

確かに日本だと、日本語のニュースは出ているのに英語のニュースが全然出ないなど、海外の情報が全然伝わっていないんです。

五嶋:それで言うと、LIFULLさんと一緒にiSGSが投資しているKAMARQという会社は本社がシンガポール、工場はインドネシアにあります。

廃材を圧縮して、すごく質のいい圧縮材をつくるのが得意な会社なんですよね。僕は銀行員の頃に工場もたくさん見ていましたけど、日本の工場にぜんぜん負けない、素晴らしい工場です。

それだけクオリティの高いものをローコストでつくれるのは凄いなと思うんです。

VCというと、やっぱりIT・Webというイメージが強いと思うんです。ROIの観点からそういう領域の投資が多くなるのは合理性があるんですね。僕自身もKAMARQさんの工場を見せていただいているとき、「ベンチャーキャピタルなのに、なんでこんなにでかい工場を見ているんだろう?」と、銀行員時代にもどった気分になりました(笑)