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社会人が教える企業研究!実践的な企業研究の方法とは

就活生からは企業研究の「やり方が分からない」「どこまでやればいいか分からない」という声をよく聞きます。本コラムでは、企業研究の目的を整理したうえで、具体的で実践的な企業研究の手法について理解していきましょう。

具体的な方法論の前に…企業研究の目的とは

就活するにあたり、どうやって企業研究をしたらよいか分からないと不安に思う前に、まずはなぜ企業研究をする必要があるのかを考えてみましょう。闇雲に調べるよりも、目的を意識することで情報の取捨選択ができるようになり、企業研究の自分なりの着地点が明確になります。

・自分の働きたいと思える企業を探すため 企業研究の第一の目的は自分の働きたいと思える企業を探すためでしょう。社会人になっている先輩方は数多ある企業からどのように自分の入りたい企業を選んだのか、気になりませんか。

多くの就活生は企業のことについて、仕事についてよく知りません。知らないまま、自分に向いている会社や仕事が分からない、と嘆いていることが多いです。企業のことを調べないと、自分が働きたいと思えるかどうか分かりません。

・自己分析を深めるため 自己分析では、自分が何をやりたいか(WANT)、何ができるのか(CAN)を自問自答して、自分なりの答えを探します。しかし、企業のことや仕事ことを知らないまま考えると、独りよがりになりがちで、人事担当者からは高い評価はもらえません。どのような仕事なのか、仕事では何が求められるのか、を同時に調べないと、自分のやりたいことやできることがリアリティを持ちません。

・具体的で魅力的な志望動機を言えるようにするため 魅力的な志望動機を言えるためにも企業研究は必要です。その企業の商品・サービスや業務について、自分の強みと絡めて具体的に言及できるとポイントが高い。

中でも、面接では「同業他社と比べてうちを希望する理由は?」と聞かれます。この質問に対して、企業研究で得た分析は有効活用できるのです。

例えば、総合商社業界を想定し、三菱商事と伊藤忠を比較しましょう。三菱商事は、石油、天然ガスなどのエネルギー資源に強みを持つ企業です。一方で、伊藤忠は食料品や機械、住宅など資源分野ではない事業を得意とする企業です。

このように、企業別で事業の特性や強みなどを知っておけば、伊藤忠の面接で「なぜ自社なのか?」を聞かれた場合、「食料品の分野に関わりたいから」と答えられます。

つまり、各社の違いを深く知り、「自社を志望する理由」の論拠を固めるためにも、企業研究が非常に重要となるのです。

・志望度の高さをアピールするため いくら御社が第一志望ですと述べたところで、根拠がありません。企業は自社のことを詳しく調べているか、というところで志望度の高さを測ることが多いです。

本当に志望度が高い学生は自社を詳しく研究していると思っています。また、人事担当者は、業務内容に絡めて志望理由を語ってくれる学生は配属のイメージを持ちやすいです。

企業研究方法のポイントとは?

企業研究を行うにあたって、具体的な手法の前におさえるべきポイントを説明します。

・まずは1つの企業を深く調べる まずは1つの企業を徹底的に深く調べることをお勧めします。浅い理解で複数の企業を比較しても面接ですぐに見抜かれます。1つの企業を深く調べることで他の企業を見る観点が養われます。

行きたい企業が定まっていない人は自分が知っている有名な企業で構いませんので、企業研究をするターゲットの企業を決めましょう。

「どこまで企業のことを詳しく調べればよいかわからない...」「企業比較ってどうすればよい?」企業研究についてイメージがわかない方は、以下の記事を参考にしてみて下さい↓

ANAとJALって何が違うの?就活に役に立つ企業比較のポイント

・何を判断するために調べるかを意識しよう 前述の「企業研究の目的とは」で述べたように企業研究の目的は複数あります。就活生は意識せずに調べると、自分が気に入るかどうか、という観点だけに自然と注目しがちです。

例えば、勤続年数は長いか、福利厚生は充実しているかどうか、という情報は自分に合った企業を探すという目的としては重要な指標です。しかし、企業研究は相手にアピールするためにも必要なことを忘れてはいけません。

・その企業(事業)のお客様が誰かを調べよう 就活生はいち消費者としての視点に偏りがちです。よく言われることですが、BtoBについて理解することが重要です。そのときに、この企業のお客様は誰なのかを調べることが重要です。

例えばパソコンを作っているメーカーのお客様は誰でしょうか?当然ながらPCを使っているのは個人ですが、顧客が誰かと考えると直販なら一般消費者ですが、家電量販店を介すことが多いですよね。市場としては法人が大きいです。

・調べやすいことと調べにくいことがある 企業理念、商品・サービス、知名度・話題性、施設・環境、制度などはインターネットや会社説明会などで比較的把握しやすいです。一方、調べにくいことは、裁量範囲・やりがい、風土(組織・個人)、経営陣(人柄・カリスマ性)、働きやすさなどです。

これらは、様々な情報から推し量る必要があります。人事担当者の説明、働いている社員の所感(OBOG訪問)、インターンシップ等で自ら感じる、などです。インターネットの口コミ情報は信じていいかどうか冷静な判断も必要です。

企業研究の実践的な方法

企業研究を実践する際の具体的な手法を説明します。少なくとも1つの企業、1つの業界はこの手法を使って研究してみることをおススメします。

・業界地図 業界の全体像をつかむのに最適です。企業研究のスタートに活用するとよいでしょう。就活生なら最低でも業界地図は目を通しておきましょう。

業界地図は新聞社や経済系の出版社から複数種類発行されています。業界地図のメリットは2点です。

1点目は、業界全体を俯瞰する視点を持てること。業界地図では、その業界のトレンドや傾向、市場シェア等がまとまっています。

2点目は、業界の主要プレーヤーである企業情報を浅く知れること。

業界地図では、主要な産業ごとに、企業やグループごとの売上、業界のトレンドや今後の傾向、資本グループや系列・ライバル関係などの勢力図がまとまっています。

有名企業であっても「実はあの企業の資本傘下にある」ということは珍しくありません。社会人でも、業界地図を見て初めて知る関係性も多いです。

企業研究の第一歩として、業界全体の動きや各社の情報を幅広く収集する際に、業界地図は非常に有効です。

・四季報 四季報という言葉自体は、1年に4回(季節ごとに1回)発行される出版物のことを指しますが、企業研究においては東洋経済新聞社の「会社四季報」「就職四季報」が有名です。

四季報のメリットは、企業の経営状態を表す定量的な情報が簡単に手に入ること。

四季報には売上高、営業利益、経常利益、純利益などの企業の経営に関わる業績が細かく記載されています。こうした売り上げなどの情報を一から、企業HPで集めようとすると、かなりの手間がかかりますが、四季報があれば志望企業の業績などを簡単に知ることができるのです。

一方で「就職四季報」では、選考フローや採用大学の実績、初任給など就活生にとって必要な情報がまとまっており、選考対策の指針としても有効活用できます。

・企業HP 企業HPから確認すべき点は「その企業の顧客向けのメッセージ」です。お客様に自社をどのように表現しているかを確認しましょう。二点目に、業績等の最新データです。「投資家向け」「IR情報」「企業データ」などのページで売上高や財務状況を確認しましょう。

三点目としては、企業理念です。企業理念を把握するだけでなく、それをどのように扱っているか、商品・サービスにどのように反映されているかを自分の目で確認しましょう。

・ニュース検索 調べたい企業や業界についてのニュースを調べることで、何がホットな情報なのかを把握することができます。通常の検索欄で「企業名 ニュース」と検索してもいいですし、一定規模以上の企業であれば「企業名 プレスリリース」と検索しても情報が出てきます。また、Googleニュースなどのニュースサイトで企業名を検索する方法もおススメです。

・業界新聞 新聞といえば日経新聞や読売新聞などの全国紙を思い浮かべると思いますが、業界ごとに発行されている業界新聞というものがあります。知らなかった人はぜひ「業界新聞 一覧」と検索してみてください。

こんなニッチな業界の新聞もあるの?と思うくらい、非常に幅広い領域で業界新聞が存在しています。例えば、日本種苗新聞、板紙・段ボール新聞、全国食鳥新聞のような新聞もあります。

志望する業界について、一度目を通しておくと業界としてのホットな話題を把握することができます。ある程度インターネットでも業界新聞を読むことはできますが、大きな図書館に行って紙面を一通り読むことも大事です。

・会社説明会 本当に行きたい企業ならば説明会で詳しい話を聞ければいいや、と思って参加するのは間違いです。自分で事前に調べたことや立てた仮説が正しいかどうかを掘り下げるための場として考えるのがよいでしょう。

事前に調べておくことで、当日詳しく聞きたい事業領域や説明会でアピールにもつながる質問を考えられます。大規模な就活イベントに参加したことで就活している気になりがちですが、事前の企業研究なしでは理解が深まりません。

・OBOG訪問 OBOG訪問は企業研究でもっともリアルな情報を得られます。質問ができて疑問を解消することができる、というメリットがあります。OBOG訪問では会社説明会以上に「教えてもらいにいく」というスタンスでは駄目です。

「あらかじめその企業のことを調べて、自分なりの仮説や疑問を持ち、それをぶつけにいく」というスタンスをもってください。OBOG訪問も選考の一部であることがあります。

OBOG訪問をしたという事実は熱意の表れとしてプラスに働きますが、訪問した社員に悪い印象を持たれてしまうと、それが人事担当者に伝わってしまうことがあります。忙しい中対応してくださる社員の方への敬意を込めて、入念に準備をして望みましょう。