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【エネルギー業界】もはや安定ではない?競争激化の電力・ガスの動向

就活ランキングでも毎年人気のエネルギー業界。電力やガスの大手を志望する就活生も多いですよね。ですが原発事故以来、エネルギー業界に大きな変化が起きていることをご存知でしょうか?本記事では知らないとまずい業界の情報について徹底解説します!

エネルギー業界 もはや安定はウソなのか?

私達が生活をする上で欠かせない電力やガスなどのエネルギー、そのインフラを支えるのがエネルギー業界です。

この記事を読んでいる就活生の皆さんもエネルギー業界に関心を持っているのではないでしょうか?

ですがもし、「安定」を求めてエネルギー業界を志望しているのだとすると、危険かもしれません。

エネルギー業界の代表格たる電力やガスインフラの領域において、「競争の自由化」により多くの企業が参入、その数は今後も増えていくと予想されています。

例えば、従来は東京電力だけが電力を供給できるエリアがあったとします。ほぼ競争のない市場であり、想像どおり安定した業界です。

しかし、現在は大手から中小まで多数の新規企業が、エリアに縛られることなく参入できるように法律が緩和されました。それだけでなく、関西電力など既存の電力大手も参入できるのです。

そのため、今後は新規参入の企業が大手企業にとって変わることも十分に考えられます。既存大手もライバルとなったことで、差別化や値下げ、新規事業に取り組まざるをえないのが現在のエネルギー業界です。

当然、就活生の皆さんには、以前のエネルギー業界の就活で求められた以上に業界研究や企業研究による企業の比較が求められます。

「安定」というキーワードや「インフラとして社会の役に立ちたい」などの就活の軸が悪いわけではありません。

しかし、志望動機がそれだけでは「この就活生は本当に現在のエネルギー業界の変化を理解しているのか?」と疑問を持たれるかもしれません。

そこで、本記事ではエネルギー業界の中でも電力とガスの事業領域について基本的な概要から「販売の自由化」に関する情報、そして企業比較のポイントについて解説していきます!

ぜひ最後まで読んで、周りの就活生に差をつける志望動機を書けるように企業研究の参考としてくださいね。

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エネルギー業界の概要 3つのフェーズとは

まずはエネルギー業界全体がどのような流れで構成されているかを理解しましょう!

一般的にエネルギー業界は以下の3つのフェーズに分かれます。

①探鉱・開発 ②輸送 ③加工・流通

まず①探鉱・開発ではエネルギーの素となる石油や天然ガスの採掘を行うフェーズになります。

そして②輸送では、採掘された石油や天然ガスを安全に日本に運ぶフェーズとなります。

最後に③加工・流通では、日本に輸送された石油や天然ガスを素に、皆さんが日々の生活で使う電気やガスといったエネルギーに加工して届けていくフェーズになります。

例えば石油の流れを追うと、石油採掘会社がアジア諸国で石油を採掘し、海運会社が石油タンカーで日本に運び、東京電力が火力発電にて石油を電気に変えて、皆さんの元に届けるという流れになります。

この3つのフェーズに関わる企業の中で、就活人気ランキングでも上位にランクインする人気企業は加工・流通フェーズの企業です。エネルギー業界志望の就活生の多くは、この加工・流通フェーズの会社を志望するのでは?

この加工・流通フェーズでは主に電力会社、ガス会社、石油会社の3つのジャンルに分けることができます。

本記事ではこの加工・流通フェーズの3つのジャンルの中でも、特に近年変化の激しい領域として電力会社とガス会社について詳しく解説していきます!

エネルギー業界の王道、電力会社

電力会社の事業は主に、地域電力会社や電気事業者が電気を発電し、必要な人の元へ届けるサービスです。

近年、特に変化が激しくなっているこの事業領域について、その理由や内容をここで理解していきましょう。

就活生の皆さんがまず押さえるべきは、電気は電圧によって3種類に分類できるということです。

大規模なデパートや工場など大量の電気が必要な場所向けの「特別高圧」

中小規模の工場やスーパーなど向けの「高圧」

家庭や小規模の商店向けの「低圧」

エネルギー業界 電力の分類

これら3種類に分類されます。2000年以前は東京電力や関西電力を始めとした10社の地域電力会社しかこれらの電気を供給することができませんでした。

その後2000年より特別高圧が、2004年には高圧が地域電力会社でなくても自由に販売できるようになりました。

そして、電力の全面自由化とは2016年より「低圧」の電気が自由に販売できるようになったということです。

詳しくは後述しますが、とても重要なトピックなので覚えておいてください。

2017年度の電力業界の業界規模は20兆4,122億円となっています。エネルギー業界の中でも圧倒的な規模であり、物流や金融業界の業界規模に匹敵します。

ではまず、電力会社の概要を知るために上位5社の売上高を比較してみましょう。

このグラフを見ると圧倒的に東京電力HDが抜き出て、次に大きく離れて関西電力、その後僅差で中部電力と東北電力、九州電力が続いています。このグラフから東京電力の売上が圧倒的なことがわかります。

次に2012年からの上位2社の東京電力HDと関西電力の当期純利益の推移を見てみましょう。

2012年に両社は大きな赤字を計上しそこから上下に激しく変動しており、「安定」のイメージが強いエネルギー業界が、実は大きく変化していることがわかります。

▼エネルギー業界各社の通過ESが気になる方はこちら↓ 東京ガス_ES(2020卒_本選考)

関西電力_ES(2020卒_本選考)

大阪ガス_ES(2020卒_本選考)

ここから何がわかるのでしょうか?

まず、2011年に起こった東日本大震災が大きく関係しています。福島原発を所有する東京電力は大打撃を受け、現在も立て直しを図っている途中です。

震災後に日本各地の原子力発電所は停止しており、代わりにコストの高い火力発電で賄っているので売上規模に対して利益率が低いのが現状です。

さらにこの原発以降、限られた大手電力会社がその地域の電力インフラを独占していたことが、福島エリアのインフラ復旧の遅れを招いたことが問題視され、「低圧」の電力の全面自由化が実現したのです。

大手電力会社は2016年までは電気料金の価格を引き上げることで、黒字化を図ってきました。

しかし、上述した2016年からの電力の全面自由化により新電力事業者が参入し、価格競争が起こっています。

以下のグラフに示すように、既存の電力会社以外の小売電気事業者数は伸び続けています。

ここまで、電力業界の概要と売上や新規参入から見る業界の変化について解説してきました。

特に東日本大震災と福島原発以来、原発停止と火力発電の増加によるコスト体質の悪化、電力の全面自由化による競争の激化の2大トピックが今後の動向のポイントとなるでしょう。

そして、電力業界のこれらの変化にはガス業界が大きく関わってきます

そこで次に、ガス業界について詳しく解説していきます!

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エネルギー業界、ガス会社も見所?

ガス業界の主な仕事は、家庭や工場などのエンドユーザーにガスを供給することです。

ここで言うガスとは都市ガスとLPガスの二種類のことを指しています。

都市ガスとはLNG(液化天然ガス)から作られるガスであり、LPガスとはLPG(液化石油ガス)から作られるガスのことです。

ではまず業界規模から見ていきましょう!

ガス業界の2017年の業界規模は約9兆円と言われています。

中でも特に売上規模の大きい会社は東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西武ガスです。まず、これらの企業を比較するため売上を比較してみましょう。

以上は2017年度の各社の売上です。東京ガスの売上規模が圧倒的に大きいですね。また、これらの会社は都市ガスを主力に販売する会社です。

では次に、業界の業績推移を見るため、東京ガスと大阪ガスの売上高の推移を見ていきましょう。以下のグラフは2012年度から2017年度までの推移を示しています。

このグラフを見ると2014年度と2016年度を境に同じ動きをしています。

これは何を表しているのでしょうか?

まず2014年度までは、東日本大震災の影響で原子力発電所がストップした代わりに火力発電の比率が伸びたことに関係しています。都市ガスを作るためのLNGは火力発電にも使われるのです。

LNGを火力発電業者に販売することで利益を伸ばしますが、2015年は暖冬の影響で都市ガスの販売が伸びずに減益となっています。

重要なのは2017年の増収です。これは都市ガスの伸びだけでなく、2016年の電力の自由化による電力事業への参入が増益に繋がっています。

そして、2017年4月よりガス業界でも都市ガス販売の全面自由化がスタートしました。

ちなみにLPガスは以前より自由化されており、都市ガスも大規模な工場など大口顧客に対しては自由化されていました。

2018年5月時点で、都市ガス販売における新規事業者数は19にとどまっています。

これは電気に比べ、原材料の調達やガス配送の参入障壁が高いことが挙げられます。

具体的には、東京ガスが都市ガスを届けるための配送管インフラを握っているので、新規参入業者にガスの契約を奪われても、配送管の貸出料で利益を出せるのです。

逆に電力は発電さえできれば送電業者と契約すれば良いため、参入障壁が低く競争が激化しているのです。

ここまで書くと、「ガス会社は都市ガス配送管の使用量を高くすれば儲けられるのではないか?」と考えるかもしれません。

確かにこれは正しいのですが、市場の独占を防ぐために国が料金設定に介入する可能性は大いにあるため、この配送管事業に偏らずに利益を獲得する企業に注目することが企業選びで重要となるでしょう。

ここまで、ガス業界の動向について解説してきました。就活生の皆さんが押さえるべきポイントとしては、電力業界と密接に関わっている点です。

電力の全面自由化及び都市ガスの自由化で、電力会社大手とガス会社大手は互いに顧客を取り合うライバル関係となっています。

LNGの販売が好調なこともあり、電力業界よりも安定した伸びが予測されていますが4大企業以外のガス会社は新規参入業者にとって代わられる可能性は十分にあります。

今後は、皆さんの志望先のガス会社がどのような事業を行っているかだけではなく、そのエリアで新たなライバルとなっている電力会社を始めとした新規参入の企業の動向とも比較する必要があるでしょう。

では最後に、これらを踏まえてエネルギー業界の企業をどのように比較すれば良いのかを、業界の今後の動向を元に解説していきます!

▼エネルギー業界各社の通過ESが気になる方はこちら↓ 東京ガス_ES(2020卒_本選考)

関西電力_ES(2020卒_本選考)

大阪ガス_ES(2020卒_本選考)

エネルギー業界の今後の動向、企業比較のポイントは?

これまでお話してきたように、エネルギー業界は今後さらに再編が進むことが予測されます。

入社後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにもしっかりと企業選びに力をいれたいですよね?

そこで最後に、電力業界とガス業界の双方で、企業のどのような取り組みに注目すれば良いのかについて解説していきます。

ーー電力業界ーー

企業を比較する上で再生可能エネルギーが次のトレンドだと考える方もいるかと思います。

確かに、下記のグラフのように、再生可能エネルギーの中でも特に太陽光発電が伸びを見せています。

しかし、大手電力会社が再生可能エネルギーで積極的に売上を伸ばしているわけでなないことに注意が必要です。

実際に東京電力などの発電実績を見ると再生可能エネルギーは水力発電に偏っており、その発電実績も大幅に伸びているわけではありません。

再生可能エネルギーの領域は大手よりも新規参入する企業が強い領域です。興味のある方はぜひ、以下の企業の取り組みをチェックしてみると良いでしょう。

◆株式会社エフオン ◆イーレックス株式会社 ◆株式会社レノバ ◆オリックス株式会社

では大手電力会社はどのように差別化を図ろうとしているのでしょうか?ここで重要なのはセット販売というキーワードです。

電力だけでなく、ガスや通信など生活する上で必要なインフラをまとめて扱うことにより、営業コストを下げつつ、契約件数を伸ばすことができます。

例えば、東京電力は通信インフラのソフトバンクと提携し、通信料金とセットで契約するプランを実施しています。さらに、日本ガスとも提携し電力とガスのセット販売も取り入れ営業力を強化しています。

関西電力もガスの小売に参戦し、関西最大のライバルである大阪ガスと顧客を争っています。通信とのセット販売ではKDDIの「auでんき」と提携することで、さらなる顧客数増加を狙っています。

まず、ガス小売に参戦するメリットとしては、火力発電用に輸入しているLNG(液化天然ガス)を原料に家庭用ガスを生産できるため、参入障壁が低いことが挙げられます。

また、これまで激しい競争を経験したことがないため営業力が弱いという弱点を抱えていた電力会社ですが、通信業界と提携することでソフトバンクやKDDIなど、激しい競争の中で磨かれてきた営業部隊の力を借りることができるメリットがあります。

このように大手電力会社を比較する時は、どのような会社と提携し、電力+αの事業を展開しているかに注目すると良いでしょう。

本記事では東京電力と関西電力の例を挙げましたが、その他の電力会社も各地でこのような提携を行っています。

ーーガス業界ーー

ガス業界では大手ガス会社による電力小売への参入が続いています。

既存の大手電力・ガス会社から新規参入した事業者へ乗り換えることを「スイッチング」と呼び、2018年3月時点における低圧電力のスイッチングは662万件に及びまます。

これは日本全体の契約件数中の10%にあたります。

この10%の新規事業者の内訳は以下のグラフのように東京ガスと大阪ガスが高いシェアを誇っているのです。

ガス業界大手の企業は電力小売に参入する障壁が低いのが特徴です。ガスを生産するための原料となるLNGは火力発電の燃料としても使えるからです。

これにより、2016年の電力の全面自由化がスタートしてから電力会社大手の顧客を大量に奪って売上を伸ばしていました。

しかし、2017年の都市ガスの小売自由化により電力会社大手もガス販売に参戦してきたため、現在は電力側に少し押され気味となっています。

ガス業界も電力業界と同様、他社との協業をどのように進めているかが企業比較のポイントとなります。

さらに、大手ガス会社は都市ガスを家庭に届けるために必要な配送管のインフラを握っているため、「電力会社が生産するガスを配送する業者」としても生き残る道があります。

現在はライバルとして激しく争っている東京電力や東京ガスが、今後は東京電力がガスを生産し、東京ガスが配送するといった協業も実現するかもしれません。

ここまで、電力及びガス企業を見る時のポイントについて解説してきましたが、双方に共通するのは「いかに他社と協業するか」です。

実際に東京電力はソフトバンクや日本ガスといった強力な味方を得たからこそ、利益率が伸びています。

本記事でご紹介できなかった大手電力会社、ガス会社も他の会社を巻き込みながら新たな戦略を立てているので、

なぜこの会社と協力しているのか?」 「志望先の新たなライバルはどこで、その会社の事業はどんなものか?

このような観点で企業分析したり、説明会の際には実際に質問してみることをオススメします!

▼エネルギー業界各社の通過ESについて、ご確認したい方はこちら↓ 東京ガス_ES(2020卒_本選考)

関西電力_ES(2020卒_本選考)

大阪ガス_ES(2020卒_本選考)

エネルギー業界への理解を深めるために

いかがでしたでしょうか?

本記事を通して、エネルギー業界が激しい競争環境にあることが理解できたかと思います。

今後皆さんが就活する上で重要となるのは、このようなエネルギー業界の現状を分析し、各社の次なる戦略にも理解を示すことではないでしょうか?

「自分は電力業界に就職するから大手電力会社だけ調べる」

このように視野を狭めるのではなく、ガス業界や通信業界の企業動向にも注目することが内定獲得の近道になるでしょう!就活では、業界を広く見ることも大切です。

また、再生可能エネルギーの領域において、日本は海外と比べて大きく遅れをとっています。

本記事の中で、再生可能エネルギーを得意とする会社もご紹介したので、どのような事業を展開しているか、他の企業とどう違うのかも比較してみるのもオススメです。

ここまでエネルギー業界における電力・ガスについて解説してきました。

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