新聞社を筆頭に、多くの産業が斜陽と言われている
新聞社の社員といえば一昔前は栄華を極め、学生の就職先としても花形だった。しかしインターネットの台頭により、新聞社のかつての企業としての地位は失われつつあります。
例えば、業界1位、2位の大手新聞社は、発行部数を直近4年間で約100万部落とす*など、新聞社はもはや斜陽産業の企業の代表格。
*引用元:ビズジャーナル
大学生の就職企業人気ランキングの情報でも100位内さえに入っていないほど。かつて花形とまで言われた新聞社の人気は落ちています。
そこで浮かんだ一つの疑問。「今どき新聞社に就職する人は、どんな考えを持っているんだろう」。この疑問を解くべくは、大手新聞社の記者職から内定をもらった都内有名大学4年生、松井さん(仮名)に、取材を実行。
松井さんに、新聞記者という職業にかける熱い思い、そして斜陽産業の筆頭、新聞社で起きている変化について聞きました。
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就活で見えた、新聞社の厳しい現状
―今回はよろしくお願いします!大手新聞社の記者職の社員として内定をもらったとのことですが、率直にいまどんな気持ちですか?
松井:嬉しさ半分、不安半分です(笑)。
―なるほど(笑)。周りからはどういう反応が返ってきましたか?
松井:友達からは「今さら新聞かよ」なんて言われたり。僕の父も、とある新聞社の社員で記者として働いていますが、「斜陽だからやめとけ」って言われたりして(笑)。
―新聞社の社員のお父様もそうおっしゃるんですね(笑)。
松井:社員である僕の父だけでなく、他の社員の肩も戦線で活躍されるプロの記者の方も皆さんそうおっしゃいます。就活を通して、いろんなジャーナリストの人にお会いしたのですが、みんな「新聞はもう昔のように景気がよくないけど、大丈夫?」なんて聞いてくるんですね。
現場の社員の方も疑問に感じているらしいです。「どうして今のご時世、記者になりたい学生がいるんだろう?」って。第一線で働いている方たちは、それほど新聞社の将来に、危機感を覚えているみたいです。「この業界とそこで働く社員の方は本当に追い詰められているんだな」って思いました。
斜陽でも「やりたい仕事」が新聞社にはある
―就職活動を通して、新聞社の厳しい状況を突き付けられたと...なのにどうして、新聞社の記者という職業を選んだんですか?
松井:シンプルに言えば、「声なき声を拾って、記事を書いて伝えたい」ということです。
―声なき声というのは...?
松井:「本当の意味で苦しんでいる人は声をあげられない。だからこそ苦しんでいる人の声をくみ取って伝えたい」ということ。
経緯を説明すると、新聞社の社員とお話しした僕の父方の実家が福島にあって、原発の近くに住んでいた親戚が多いんです。彼らは2011年の東日本大震災と、それに次ぐ原発事故の影響を大きく受けました。住んでいた地域が避難区域に指定されて、もともと住んでいた家への帰還が叶わない親戚もいます。
―メディアでも大きく取り上げていた問題ですが、個人的な経験も影響しているんですね。
松井:もちろん原発避難者に対する各メディアの注目度は高い。でも拾い切れていない声もある。
実際に、僕の親戚の中には「何もしてないのに、普通じゃ稼げないような賠償金をもらっている」と避難先の人からやっかみを受けた人もいた。「自分たちの苦しみをどう伝えるべきかわからない」と言っている人もいて。
その姿を生で見て感じたのは、「本当に苦しんでいる人は声をあげられないし、伝える力もない」ということ。
それで、被災地になっている父方の実家に行くと、やっぱり記者が現地に住み込んで、被災者の方々に取材して発信しているんですね。
その姿を見て「苦しんでいる人の声なき声を伝えられるのは、記者しかいない。それは他の仕事では絶対できない」と思い、大手新聞社の記者職を志望しました。
―でもSNSが発展していて、誰もが声をあげられる時代ですよね。新聞記者にしかできない仕事があると?
松井:確かにSNSの発信情報によって、多くの人が「声を上げること自体」は可能になりました。でもその声が、日本全国に届き、社会を動かせるとは限りません。例えば、なんの肩書もない市民がツイッターで発言しても、うまくいって数千人にしか伝えられません。
でも大手新聞社がそれを取り上げれば、数百万人に伝えることができる。発行部数自体は落ちているけれど、大手新聞社はいまだに数百万人の読者を抱えているので。その意味では、斜陽だけれども、社会にとっては重要な産業・企業かなと。
―なるほど。でも新聞のほかにもテレビや、WEBメディアなどいろんなメディアがあります。その中で大手新聞社に絞ったのはどうしてですか?
松井:WEBメディアの存在は常に念頭にありました。だけど新聞社で働く社員には、とても充実した研修制度があるし、何十年にわたって積み上げられてきた取材や編成、記事作成の企業ノウハウ、財界や政界との人脈があります。
その点を加味すると、日本でジャーナリストになるにはどうしても大手の新聞社でスキルを身に着ける必要があると思いました。
それに「新聞社は斜陽になりつつあるけど、かえって良いこともあるな」と感じたことが一点あって。
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新聞社には 「伝えること」へ情熱的な社員が集まる
―「斜陽になりつつあるけど、かえって良いこともある」とは...?
松井:「困っている人の苦しみや声なき声を伝えたい」。そんなふうに純粋に声としての情報を「伝えること」に情熱を傾けるジャーナリスト志向の学生が新聞社に集まっているなと。
それは昔ながらの新聞記者の雰囲気とは、少し変わってきていると考えています。
―昔の新聞記者と、いま新聞記者を志望する学生はどう違うんですか?
松井:個人的には、「お金」と「名誉」を強く求めているかどうかの違いかなと。
「お金」に関して言えば、僕が就活を通じてお会いした40代、50代の記者の方たちには「給料がいいから、記者になった」って人たちが多くて。
もちろん、「伝えること」に情熱を持って企業に入社した人もいると思います。
でもその世代からすれば、「これだけ低い給料で、戦線で戦わなければならない記者になりたい若者がいるんだろう」と不思議に思うみたいです。今の40代50代の記者たちは本当に莫大な給料をもらっていたけど、今の若い記者たちはどんどん給料が減っているから。
だから、いまや新聞社は「お金を稼ぎたい学生」が来る環境ではないと思います。
―「名誉」に関してはどうですか?
松井:昔から記者には、大災害や大事件を記事にして名誉を得るというような風土があります。その表れとして、「当たり県」という言葉を記者の方から聞いたことがあって。
―当たり県...? それってどういう意味ですか?
記者は、昔から地方の都道府県にある支局でキャリアをスタートさせます。自分が配属された県で、大災害や大事件が起こると、それを元に関心度が高いニュースを書く。そうすると記者として名が売れて、東京や首都圏の局に異動になる可能性が高くなります。
これを「当たり県」と業界では呼んでいます。大災害や大事故は、ある種記者にとっては名誉を手に入れるチャンスなんです。
でも人の不幸を喜ぶようで、僕は苦手。
僕の知り合いには新聞社の内定者が多いんですが、彼らもそういう記者の風土に違和感を覚えるみたいです。
―今の学生の中には、昔ながらの新聞記者の風土に拒否反応を示す人も少なくないんですね。
松井:そうですね。新聞社は人気商売ではなくなりつつある。だからこそ「お金」や「名誉」欲しさではなく、「困っている人の苦しみや声なきを伝えること」に、情熱を持っている学生が集まっていると思います。
もちろん待遇の面では悪くなっていくかもしれません。だけど「何かを伝えたい」「ジャーナリストを目指したい」そんな情熱を持つ学生にとって、新聞社はより魅力的を増しているようにも感じます。
―「声なき声を拾い集めて、記事を書いて伝える」ジャーナリズムの存在意義に共感する学生にとっては、斜陽と言えども、新聞社はより熱意のあふれる環境になりつつあるのかもしれませんね。
今日はありがとうございました。
新聞社で自分が本当にやりたいことは何?
斜陽と言われる産業だけど、どうしても働いてみたい。
周りからは「どうして?」と訝しがられるけれど、衰退産業だからこそ、そこには情熱的な同世代が集まって切磋琢磨できる環境があるのかもしれません。
「斜陽だからなし」と切り捨てる前に、まずは本当に自分がやりたいことと向き合ってみてはいかがでしょうか?
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