建設業界のビジネスが危険!?就活生が知るべき内部事情
ー前回は、主に建設業界の働き方についてお伺いしました。でも「オリンピックが終わったら建設業界は危険かも」と思う就活生も多いかと...
実際のところどうなんですか?
金刃:オリンピック後の先の見えなさは、ひしひしと感じます。
建設業界は基本的なビジネスモデルの大きな転換を迫られています。
前回もお伝えしましたが、建設業界の基本的ビジネスモデルは、受注型です。
デベロッパーや公官庁から案件をもらって工事を行い、収益を上げています。
しかし顧客の「新しく建物を建てたい!」というニーズがないと、そもそも稼げません。
2025年以降になると、このビジネスモデルは大きく崩れる可能性がある。
その理由の一つは、建設需要の低下が明らかであること。
今はオリンピックバブルともいえ、企業や国からの案件が豊富にあり大きな収益を上げています。
しかし、オリンピック以降は大きな需要低下が起き、国内の建設需要は伸び悩むことが統計的に明らかなんです。
この苦しい状況に拍車をかけるのが、優秀な労働者の高齢化・不足です。
今の職人の年齢人口は50代後半から60代後半に大きく分布し高齢化が深刻化しています。
それ故、建設業界に付きまとう3kのイメージが作用して、若手の労働者が不足しています。
労働者・職人の不足により、人材の希少価値が高まり、人件費といったコストが高まる。
なので、従来の職人を何千人も囲って、建設するモデルでは収益が挙げづらくなります。
ー仕事自体が減り、さらに建設コストも上がる余地が大きいと。
金刃:さらに、建設業界はもともと10年、20年といった長期的なスパンで戦略を練るのが苦手なんです。
建設業界の「建設」「土木」という仕事は基本的に3~5年スパンで進みます。
だから、2.3年から5年のスパンで計画を練り、見通しを立てビジネスを行うことは得意です。
だが10年、20年の長期的戦略を考え、経営を行うことは苦手ですね。
事実、他業界と比較しても建設業界の企業には、社内にマーケティングという部隊がない。
つまり、伸びそうな市場に参入し0から新しい事業・仕事を作り出す。その発想自体が薄かった業界なんですよ。
なぜなら昔から顧客からの案件ありきのビジネスモデルで成り立ってきたためです。
しかし現状は従来の受注型ビジネスモデルがもう限界に来ている。そして長期的戦略も弱みの一つ。
まさに建設業界の企業は、変革の時期を迎えています。
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建設業界がベンチャー企業への事業投資を活発に!
ーでは具体的にどんな動きが建設業界で起きているのでしょう?
金刃:大きくあるのは、二つです。
一点目は、先進技術を持つベンチャー企業への事業投資。
そして二点目は、0からの新規事業創出です。
まず一点目の、ベンチャーへの事業投資からお話します。
大手ゼネコンは、シリコンバレーの3DプリンターやAIを扱うベンチャーへの事業投資を進めています。
将来的には、3Dプリンターで資材を作り、AIが建築物を組み立てる世界が到来するでしょう。
つまり、大量の労働者を使って行う今までの建設と将来の建設のあり方は大きく変わる。
この事業投資は、職人の不足に悩む日本の建設企業には必要な投資です。
そして、この投資が活発な要因には、全く異なる業界・企業が街づくりに参入しているという背景があります。
例えば、Google。Googleは、トロントのウォ―ターフロントで、都市計画を進めており、3Dプリンターの開発にも手を出している。
将来的には、Googleが3Dプリンターを用いて資材を調達・工事し、データによって町全体を管理する街づくりを手掛けるでしょう。
Googleが、都市の設計から工事、つまり川上から川下まで手掛け始めたら、建設業界はなくなりかねない。
オリンピック需要で、請負型のモデルでもまだ稼げる今だからこそ、この事業投資が重要ですね。
逆に今乗り遅れたら、建設企業の将来が危ういという危機感は強いです。
建設業界が取り組む新規事業の創出とは?
ーでは二点目の、新規事業の創出に関して教えてください。
金刃:繰り返しになりますが、従来の請負型ビジネスモデルでは、ニーズがないとそもそも稼げない。
それ故、売上高を担保するため赤字前提で案件を受注することも時にはある。
そのため二点目の動きとして、建設業界は新規事業の創出をしています。
どんな領域で事業を起こしているのかというと、農業の分野です。
なぜなら、昔から建設業従業者には兼業農家が多い。
そして彼らは、収穫できない時期や公共事業が起きた際に建設業に従業していました。
歴史的に建設と農業のつながりが深いんです。
弊社では企業向けの農作物の生産販売を行っています。
もちろん農業事業の製品単価は、建設に比べて非常に低い。
やはりゼネコンは規模の大きさを活かし、ICT技術を用い効率化された施設で大規模な栽培を行う。
そして最終的には、受注型建設事業の売上比率が大きい事業構成を変えなければなりません。
業界全体で見ても、自社で建設した施設で地鶏やブルーベリーなど地域に根ざした農作物の生産を行う企業は多いです。
ー大手ゼネコンから、地方の建設業者まで農業という分野に進出しているんですね。
金刃:多くの学生さんは、大きなモノを作り上げるスケール感、社会に与えるインパクトの大きさを求め、建設業界に惹かれていると思います。
ですが、この業界を志望するなら、お伝えした二つの観点から建設業界の置かれる状況を知る必要がありますね。
建設の長い歴史の中で、大きな変化が起きつつある時代ですから。
ーまさしく建設業界も市場の動向やテクノロジーの発展を見据え様々な取り組みをされているのですね。
滅多に耳にすることのない貴重なお話ありがとうございました。
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